ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

相続権の範囲とその配分は
 相続とは、人の死亡により、被相続人に属した一切の権利義務が、相続人に移転することである。
相続の対象となるのは、財産上の権利(所有権、預金、売掛金、株式、有限会社の持分等)、義務(買掛金、保証等)と契約の地位(借主、貸主等)である。生命保険金、退職金受給権、遺族年金受給権は契約に従うことになる。

<< 相続人と相続放棄 >>

民法は、相続人と相続分とを次の表のとおり定めている。

被相続人の死亡前に相続人となるべき子や兄弟姉妹が死亡している場合、直系卑属が代襲相続人となる。
なお、配偶者が死亡している場合は、第一順位であれば直系卑属が、第二順位であれば直系尊属が、第三順位であれば兄弟姉妹がそれぞれ全部を相続することになる。

特別受益と寄与分
相続人の中に被相続人から生前、結婚や養子縁組のためまたは生計の資本として贈与を受けた者がある場合、これを特別受益といい、遺産分割の関係ではそれを被相続人死亡時の財産に加えたものを相続財産とみなす。
また、寄与分とは、相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産の給付、被相続人の療養看護その他の方法で被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がある場合、共同相続人の協議により、または家庭裁判所が、寄与した者に相続財産の中から一定の財産を与えることをいう。

相続放棄と限定承認
相続放棄とは、相続開始後に、相続しないことにする手続きをいい(生前にはできない)、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に行なう。負債が多い場合に、この方法が採られる。
限定承認とは、相続で得た財産の範囲内で相続する債務を返済することをいう。財産もあるが負債もある場合に利用される制度で、共同相続人全員が共同してしなければならない。これも相続放棄と同様、3か月以内の期間制限がある。
ただし、3か月以内でも、相続財産を処分すると単純承認したものとみなされ、相続放棄も限定承認もできなくなる。

<< 遺言と遺留分 >>

遺言
遺産の分け方について、相続人間の公平を確保するため法定相続分、特別受益、寄与分等の定めがあるが、これだけで円満に分割協議ができるかというとそうでもない。死後の争いを避ける1つの方法が遺言である。
また、被相続人は自分の財産たる遺産を死後自由に処分したいと考えることもある。その気持ちを実現する方法も遺言である。
遺言は、民法が定める方式でないと効力を生じない。口頭の遺言は認められない。
また、方式に合わない文書も効力を生じない。適式な遺言書があると、遺留分減殺請求がない限り、遺言書の記載どおりに遺産の処理がなされる。

遺留分
遺留分とは、遺言書の記載に係わらず相続人が最小限保障される相続分をいう。各相続人の遺留分は、次の図表のとおりである。

遺贈・相続開始1年以内の生前贈与、1年超前でも遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与により遺留分を侵害された相続人は、減殺請求をできる。
減殺請求とは、遺留分を侵害する部分の遺言等の効力を失わせることである。
兄弟姉妹には遺留分がない。直系尊属のみが相続人である場合は、法定相続人の3分の1、相続人がその他の場合は2分の1である。
遺留分減殺請求権は、侵害されたことを知ったときから1年以内に請求しなければならない。具体的には、遺言書や生前贈与で多くの遺産を貰うことになった人に対して、遺留分の引渡しを求める文書を送付する。任意に応じない場合には、家庭裁判所に調停の申立てをする。
遺言書を書いても、一部の相続人の遺留分を侵害する内容の場合は、遺留分請求という形で激しい争いが生じることになる。遺言書作成に当たり注意したい点である。

著者
中山 昭男(相続コンサルタント)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。