ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

息子がまだ若い。非同族をワンポイントで社長に据えたいが…
 できれば止めるべき。選ぶなら「野心のない人」がいい。

後継者がまだ若いため、ワンポイントリリーフ的に非同族の副社長なり専務なりを社長に立てるという例はけっこうある。社長が体調を崩し入院を余儀なくされ、後継者となる息子はまだ学生といった場合なら、やむを得ない措置ともいえるが、上場会社で株主の監視がある場合と違い、非上場の中小企業(オーナー会社)では人物をよくよく見極めないと、将来の禍根を作ることになりかねない。

<< 連帯保証人になれるか◆ >>

私の知っている非同族のワンポイント社長の例で、何十億あった資産を食いつぶし、逆に何十億という借金を作ったケースもある。オーナー社長に娘さんしかいないための措置であったが、交代してしばらく後にオーナーが亡くなられたこともあって悲惨な結果となった。
基本的には、中小オーナー企業は、他人に会社を任せてはいけない。自分の興した会社を本当に末永く子孫に継がせていきたいのなら、京都や大阪の何百年続く会社がそうであるように、直系相続が一番だ。
息子が一定年齢に達するまでという約束で社長の兄弟をワンポイントに起用するというケースでも、社長に居座って約束を反古にする例も多い。叔父│甥の関係でさえそうなりかねないのだ。他人であれば何が起こるかわからないと考えておくべきであろう。
中小企業では社長が融資の連帯保証人になることが多いが、ワンポイントという約束では連帯保証人を受けようとしないことも考えられる。結果、会長に退いたオーナーが引き続き連帯保証をし、責任だけかぶり被害を一手に引き受ける事態にもなる。先に挙げたワンポイント例はまさにそれであった。
社長にはなるが連帯保証人は受けないという場合は、もう一度、人選を考え直すべきであろう。連帯保証を負っても、とんでもない暴走をすることがあるのだから、連帯保証を負わない人間を社長にするのはもってのほかだ。
どうしても非同族のなかから短期の社長を選ばざるを得ない状況であるのなら、「野心のない人」に白羽の矢を立てる。「番頭肌」で、オーナー一族に仕えるのが自分の使命と思い込むくらいに謙虚で忠誠心の強い人こそが適任だ。

<< 社長に年齢は関係なし >>

私が事業承継に関してよく申し上げるのは、社長に歳は関係ない、社長就任は早ければ早いほどよいということ。30代、いや20代であっても早すぎるということはない。
たとえば、45歳で専務から社長に就任した場合、長く父親に仕えてきたから社長のやることはだいたいわかっており、実質的に会社を仕切っていたかもしれない。しかし、45歳にして赤いランドセルを背負った社長一年生としてあらためて勉強しなければいけないことはいっぱい出てくる。
父親の目から見れば息子はどうしても頼りなく映る。それはいつまでも父親が社長として君臨しているためだからともいえる。立場が変われば、仕事に対する気構えもおのずと変わる。なまじ他人を間にかますくらいなら、早く社長に据えて、そこから勉強させるほうが賢明な選択ではないだろうか。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。