ビジネスわかったランド (経営・社長)
事業承継と相続対策
経営に参加していない二男への自社株相続を抑えたい
やり方はいくつかあるが、まず各相続人の納得を得ておく。
中小企業のオーナーにとって、事業承継は重要な問題である。会社の将来のためにも、後継者である長男になるべく多くの株をもたせたいということは自然なことであろう。
そのための方法はいくつかあるが、その前提として自社株式の評価について把握しておく必要がある。非上場の中小企業の場合、相続税評価額が株を移転する際の基準価額となるため、事前に算出しておくことだ。また、相続に備えて、自分の財産と財産全体に占める自社株式の割合も把握しておきたい。
<< 長男が対価を支払って取得する場合(譲渡) >>
長男に自社株式を売り渡す場合に問題となるのが、譲渡価額だ。会社に、土地等の含み益や総資産から総負債を控除した純資産が相当額ある場合には、いわゆる「額面金額」そのままというわけにはいかないであろう。前述の相続税評価額を基準に算出した譲渡価額による必要があり、長男はその資金を用意しなければならない。著しく低い価額で譲渡した場合には、その対価と時価の差額が贈与とされ、長男に贈与税がかかるからだ。なお、譲渡者(社長)には、その譲渡益に対して所得税がかかることとなる。
<< 贈与・相続により取得する場合 >>
贈与により取得する場合には、従来どおりの贈与税の適用を受ける場合と、相続時精算課税制度を選択する場合に分けられる。
従来どおりの贈与税の適用を受ける場合の贈与税額は、暦年を単位として、
〔贈与財産の価額-基礎控除額(110万円)〕×税率
となる。
この方法では、相続開始3年以内に行なわれた贈与を除き、相続財産に取り込まれることはないが、自社株式の贈与を一度に行なうとなると、累進税率であるため、金額によっては莫大な贈与税の支払義務が生じることとなる。このため、多くの場合は何年かにわたって少しずつ贈与を行なう必要があるため、早めに取り組むことが肝要だ。
これに対して、相続時精算方式というのは、複数年の贈与額累積で2500万円の非課税を認め、それを超えた部分については20%の単一税率により計算するというものだ。ただし、相続の開始(社長の死亡)により、その財産は、贈与を受けたときの時価で再度相続税の課税価格に取り込まれ、すでに支払った贈与税は相続税から差し引かれることになる。
これに対して、相続まで自分の財産の処分を待つ場合は、公正証書遺言等の方法で自分の意思を残しておくことが大切だ。
ただし、民法上の法定相続分があるので、二男に対しては自社株式以外の相当の財産を相続させることも考えておかなくてはならないだろう。また長男に自社株式を相続させるために、それなりの金銭を蓄えさせておくことも視野に入れるべきだ。
このように、いくつかの自社株式の移転の方法があるが、どの方法が万全ということはない。しかし、経営者として、従業員や取引先等に対する社会的責任がある以上、万一の場合の備えについて考えることは重要だ。自らの思いを相続人各人に十分聞かせ、各人が納得のいくような状態にしておく必要があるだろう。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
中小企業のオーナーにとって、事業承継は重要な問題である。会社の将来のためにも、後継者である長男になるべく多くの株をもたせたいということは自然なことであろう。
そのための方法はいくつかあるが、その前提として自社株式の評価について把握しておく必要がある。非上場の中小企業の場合、相続税評価額が株を移転する際の基準価額となるため、事前に算出しておくことだ。また、相続に備えて、自分の財産と財産全体に占める自社株式の割合も把握しておきたい。
<< 長男が対価を支払って取得する場合(譲渡) >>
長男に自社株式を売り渡す場合に問題となるのが、譲渡価額だ。会社に、土地等の含み益や総資産から総負債を控除した純資産が相当額ある場合には、いわゆる「額面金額」そのままというわけにはいかないであろう。前述の相続税評価額を基準に算出した譲渡価額による必要があり、長男はその資金を用意しなければならない。著しく低い価額で譲渡した場合には、その対価と時価の差額が贈与とされ、長男に贈与税がかかるからだ。なお、譲渡者(社長)には、その譲渡益に対して所得税がかかることとなる。
<< 贈与・相続により取得する場合 >>
贈与により取得する場合には、従来どおりの贈与税の適用を受ける場合と、相続時精算課税制度を選択する場合に分けられる。
従来どおりの贈与税の適用を受ける場合の贈与税額は、暦年を単位として、
〔贈与財産の価額-基礎控除額(110万円)〕×税率
となる。
この方法では、相続開始3年以内に行なわれた贈与を除き、相続財産に取り込まれることはないが、自社株式の贈与を一度に行なうとなると、累進税率であるため、金額によっては莫大な贈与税の支払義務が生じることとなる。このため、多くの場合は何年かにわたって少しずつ贈与を行なう必要があるため、早めに取り組むことが肝要だ。
これに対して、相続時精算方式というのは、複数年の贈与額累積で2500万円の非課税を認め、それを超えた部分については20%の単一税率により計算するというものだ。ただし、相続の開始(社長の死亡)により、その財産は、贈与を受けたときの時価で再度相続税の課税価格に取り込まれ、すでに支払った贈与税は相続税から差し引かれることになる。
これに対して、相続まで自分の財産の処分を待つ場合は、公正証書遺言等の方法で自分の意思を残しておくことが大切だ。
ただし、民法上の法定相続分があるので、二男に対しては自社株式以外の相当の財産を相続させることも考えておかなくてはならないだろう。また長男に自社株式を相続させるために、それなりの金銭を蓄えさせておくことも視野に入れるべきだ。
このように、いくつかの自社株式の移転の方法があるが、どの方法が万全ということはない。しかし、経営者として、従業員や取引先等に対する社会的責任がある以上、万一の場合の備えについて考えることは重要だ。自らの思いを相続人各人に十分聞かせ、各人が納得のいくような状態にしておく必要があるだろう。
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2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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