ビジネスわかったランド (経営・社長)
事業承継と相続対策
相続税納付で物納と売却のメリット・デメリットは
地価下落のときに物納は有利だが、許可を必要とし、要件が厳しい。
<< 物納制度のあらまし >>
本来、税金の納付は金銭によって行うのが原則であるが、相続税だけは次のような物納制度が、例外的に設けられている。
まず、納付の際は、相続人の手元にある現金預金を納付資金に充てる。この現金預金とは、相続によって取得したものだけでなく、相続人の固有財産である現金預金も含まれる。そして、納付がむずかしいのであれば、相続人の資産状況と今後の資金収支を基礎に延納手続きを取る。それでもなお納付できない相続税額があるときに、物納が認められることになる。
物納の対象となる資産
物納の対象となる資産は、相続または遺贈により取得したもので、国内にあるものに限られ、物納できる財産の順序も次の番号順に定められている。
(1)国債、地方債、不動産および船舶
(2)社債および株式並びに証券投資信託・貸付信託の受益証券
(3)動産
このうち社債および株式並びに証券投資信託・貸付信託の受益証券や動産に関しては、原則として国債および地方債や不動産および船舶を物納しても不足する場合に限って認められる。
物納によって収納された財産は、国有財産として管理され、換金されるのが前提であるから、境界線の確認が取れない土地など管理や処分に不適当なものは許可されない。
物納の許可、不許可のとき
これまで物納の許可に長い時間がかかっていたが、平成18年の制度で申請から3か月~9か月で、許可または不許可の回答が得られることとなった。
具体的に、物納申請を行った場合には原則として申請書の提出期限から3か月以内に申請の許可または却下が行われる。
ただし、税務署長により、物納財産が多数であること等の理由により調査に3月を超える期間を要すると認められるときは6月以内に申請の許可または却下が行われる。また、積雪等の理由により調査に6月を超える期間を要すると認められるときは9月以内に申請の許可または却下が行われることになる。
なお、物納の許可を受け、物納財産の引き渡し等を行ったときに相続税の納付があったものとされる。この場合、その納付までの期間に応じ利子税が課されるが、税務署の手続きに要した期間は利子税が免除される。
物納が却下された場合は、納期限から却下までの間の利子税が課され、却下の翌日からは延滞税が課されることとなるため、却下される場合にも備えておかなければならない。
相続財産を売却したとき
一方、相続財産を売却した場合には、次のような特例がある。
相続税の申告期限は、相続の開始を知ったときから10か月以内なので、被相続人の死亡後3年10か月以内に譲渡契約を行なえば、この特例を適用することができることとなる。
そして(2)の特例は、いまだ譲渡していない土地等に見合う相続税額も含めて、実際に譲渡した土地等の取得費に加算できるので、次の設例のように結果的に課税されなくなる場合もあり得る。なお、物納申請中の土地等については取得費に加算できない。
<< 設例にみる留意点 >>
それでは、設例によって物納と売却のシミュレーションをしてみよう。
設例
(1) 土地A(小規模宅地)の相続税評価額 2.5億円
(2) 土地Bの評価額 2.5億円
(3) 土地Cの評価額 2.5億円
(4) 現金預金 0.5億円
(5) その他の財産 3億円
※相続人は子2人で、分割は確定している。
小規模宅地である土地Aが特定事業用宅地または特定居住用宅地に該当すると、課税価格は評価額の2割に減額されるので、相続税の課税価格の合計額は(1)×0.2+(2)+(3)+(4)+(5)=9億円となり、概算すると相続税の総額は約3億円になる。
この場合に、手元現金か延納による納付が困難であれば、物納によるか、土地を譲渡して現金化し、相続税を納付することになる。
物納の場合
まず、物納の場合を考えてみると、土地Aは評価額が2.5億円であるが、小規模宅地の特例による課税価格の5,000万円でしか収納されない。したがって、土地Aの物納は得策ではない。
一方、土地Bまたは土地Cを物納すれば2.5億円で収納されるから、現金預金5,000万円と合わせて相続税の納付が可能になる。なお、物納では譲渡所得税は課税されない。
売却の場合
次に、土地ABCのいずれかを売却して相続税を納付する場合を考えてみると、このケースでは、各土地の取得価額は1億円、売却額は評価額と同額の各2.5億円とする。
相続開始後3年10か月以内に譲渡すれば、相続税額×すべての土地等の課税価格÷課税価格の総額=約3億円×5億5,000万円÷9億円=約1.8億円が売却額2.5億円の範囲内で本来の取得費1億円に加算され、譲渡税額はゼロとなる。したがって、売却額2.5億円と現金預金5,000万円とで相続税が納付できる。
このケースで売却できればABCいずれかを売却して納付できるし、延納もむずかしく物納となる場合は、土地B、Cのいずれかという選択をすることとなるであろう。
以上、物納と売却の長所と短所を整理すると、次のようになる。
物流と売却の長所、短所
<< 物納制度のあらまし >>
本来、税金の納付は金銭によって行うのが原則であるが、相続税だけは次のような物納制度が、例外的に設けられている。
物納制度の概要
- 延納によっても金銭納付が困難であること
- 原則として相続財産そのものを提供すること
- 相続税の納期限までに申請すること
- 特定の財産だけが申請の対象になる
- 「物納の許可」によって収納される
- 相続税の課税価格が収納価額になる
- 譲渡所得税は課税されない
物納の対象となる資産
物納の対象となる資産は、相続または遺贈により取得したもので、国内にあるものに限られ、物納できる財産の順序も次の番号順に定められている。
(1)国債、地方債、不動産および船舶
(2)社債および株式並びに証券投資信託・貸付信託の受益証券
(3)動産
このうち社債および株式並びに証券投資信託・貸付信託の受益証券や動産に関しては、原則として国債および地方債や不動産および船舶を物納しても不足する場合に限って認められる。
物納によって収納された財産は、国有財産として管理され、換金されるのが前提であるから、境界線の確認が取れない土地など管理や処分に不適当なものは許可されない。
物納の許可、不許可のとき
これまで物納の許可に長い時間がかかっていたが、平成18年の制度で申請から3か月~9か月で、許可または不許可の回答が得られることとなった。
具体的に、物納申請を行った場合には原則として申請書の提出期限から3か月以内に申請の許可または却下が行われる。
ただし、税務署長により、物納財産が多数であること等の理由により調査に3月を超える期間を要すると認められるときは6月以内に申請の許可または却下が行われる。また、積雪等の理由により調査に6月を超える期間を要すると認められるときは9月以内に申請の許可または却下が行われることになる。
なお、物納の許可を受け、物納財産の引き渡し等を行ったときに相続税の納付があったものとされる。この場合、その納付までの期間に応じ利子税が課されるが、税務署の手続きに要した期間は利子税が免除される。
物納が却下された場合は、納期限から却下までの間の利子税が課され、却下の翌日からは延滞税が課されることとなるため、却下される場合にも備えておかなければならない。
相続財産を売却したとき
一方、相続財産を売却した場合には、次のような特例がある。
相続税の申告期限は、相続の開始を知ったときから10か月以内なので、被相続人の死亡後3年10か月以内に譲渡契約を行なえば、この特例を適用することができることとなる。
そして(2)の特例は、いまだ譲渡していない土地等に見合う相続税額も含めて、実際に譲渡した土地等の取得費に加算できるので、次の設例のように結果的に課税されなくなる場合もあり得る。なお、物納申請中の土地等については取得費に加算できない。
<< 設例にみる留意点 >>
それでは、設例によって物納と売却のシミュレーションをしてみよう。
設例
(1) 土地A(小規模宅地)の相続税評価額 2.5億円
(2) 土地Bの評価額 2.5億円
(3) 土地Cの評価額 2.5億円
(4) 現金預金 0.5億円
(5) その他の財産 3億円
※相続人は子2人で、分割は確定している。
小規模宅地である土地Aが特定事業用宅地または特定居住用宅地に該当すると、課税価格は評価額の2割に減額されるので、相続税の課税価格の合計額は(1)×0.2+(2)+(3)+(4)+(5)=9億円となり、概算すると相続税の総額は約3億円になる。
この場合に、手元現金か延納による納付が困難であれば、物納によるか、土地を譲渡して現金化し、相続税を納付することになる。
物納の場合
まず、物納の場合を考えてみると、土地Aは評価額が2.5億円であるが、小規模宅地の特例による課税価格の5,000万円でしか収納されない。したがって、土地Aの物納は得策ではない。
一方、土地Bまたは土地Cを物納すれば2.5億円で収納されるから、現金預金5,000万円と合わせて相続税の納付が可能になる。なお、物納では譲渡所得税は課税されない。
売却の場合
次に、土地ABCのいずれかを売却して相続税を納付する場合を考えてみると、このケースでは、各土地の取得価額は1億円、売却額は評価額と同額の各2.5億円とする。
相続開始後3年10か月以内に譲渡すれば、相続税額×すべての土地等の課税価格÷課税価格の総額=約3億円×5億5,000万円÷9億円=約1.8億円が売却額2.5億円の範囲内で本来の取得費1億円に加算され、譲渡税額はゼロとなる。したがって、売却額2.5億円と現金預金5,000万円とで相続税が納付できる。
このケースで売却できればABCいずれかを売却して納付できるし、延納もむずかしく物納となる場合は、土地B、Cのいずれかという選択をすることとなるであろう。
以上、物納と売却の長所と短所を整理すると、次のようになる。
物流と売却の長所、短所
著者:植田 球一(ファイナンシャルコンサルタント)
監修:税理士法人A.Iブレイン
2013年5月末現在の法令等に基づいています。
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