ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

事業承継に先立って考慮すべき点は
 事業承継を考えるに当たっては、次のように円滑な事業の引継ぎ、後継者の養成と決定、納税資金対策などが検討ポイントとなる。

円滑に事業を引き継がせる
経営をうまく後継者に引き継がせることはオーナー経営者にとって大切な役割である。事業承継対策として重要なことは、次の2点である。
1.適切な後継者を養成し、円滑に引き継がせること
2.相続税対策を講じておき、納税により会社経営が危機にさらされないようにしておくこと
相続は“争族”といわれる。遺産をめぐっての相続争いをいうが、会社の経営権をめぐっての争いも時折見受けられる。
このような経営権の争いは、会社内部に従業員間の不和をもたらし、外部には信用不安を起こす。
こうした事態を避けるためにも早いうちから後継者を決定し、周りにも周知させておくべきである。会社の経営権は、総株数の3分の2以上を保有することで確定するから後継者を決定すれば、自社株を引き継ぐ方法を考えるべきである。

後継者の養成と決定
事業承継の第一ポイントは、後継者が経営能力、人格や人望を備えることである。日頃から経営者教育(帝王学)を行なっていく必要がある。
また、後継者がまだ若ければ、会社に対し誠実で、かつ有能な番頭格を補佐役として付けておくことも必要となる。

相続税・納税資金対策
円滑な事業継承のためには、相続税対策が決め手といってよい。たとえば、相続財産のほとんどが会社所有の土地とか、会社に貸与している土地の上に工場が建っているといった場合には、相続税を支払うために会社使用の土地等を売却するというケースもあり、会社存続すら危ない例がある。
このような事態を回避するために、次のような対策を講じておくことが必要である。
1.相続税そのものを減少させる対策
・相続財産を減少させる
・相続財産の評価額を引き下げる
2.納税資金準備の対策
換金可能な財産を多く保有する一方で、生命保険を活用する。
3.納税猶予制度の活用
非上場の株式については、一定の要件を満たす場合には、その後継者が相続等により先代経営者から取得した株式(発行済株式総数の3分の2までの部分に限る。)の価額の80%に対応する相続税の納税が猶予される。
なお、猶予された税額は後継者の死亡時には免除されることになる。
この適用について検討する。

事業承継プランの立て方
適切な相続税対策には、十分な時間が必要とされ、相続直前の急な対策では期待した結果を得にくい。
相続税対策には長期的なプラン、適切な時期を選んで行なう中期的なプラン、相続が開始するであろう2、3年前に行なう短期プランに分かれる。時間のかかる相続税対策は早い時期から取り組むべきであり。相続直前で間に合うもの、逆に相続直前に行なうべきものを十分に見極めなければならない。おおむね、その対策は次のとおりである。


著者
中村 敏彦(公認会計士・税理士)
監修
税理士法人A.Iブレイン
2013年4月末現在の法令等に基づいています。