ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

相続税軽減のための事前対策は
会社経営者の相続税対策は、財産を配偶者や子供たちにうまく引き継がせることと、事業を円滑に後継者に引き継がせる事業承継のための相続税対策という2つのポイントから行わなければならない。相続税対策は、次のように、様々な手法を組み合わせて実行していかなければならないが、効果の大きなものとしては不動産の有効活用がある。

相続税対策のいろいろ

相続税対策は、手法を組み合わせて実行していかなければならない。そして、常に見直しが必要である。
相続税対策の基本は、まずは相続財産を減らすこと、さらに財産の種類、たとえば有価証券から不動産へ転換するとか、利用状況、たとえば自用地から貸地等に変更することで相続税評価額を引き下げることによって相続税の減少を図る、ことである。
2億円の金融資産を所有している経営者の甲氏の場合は、次のとおりである。
甲氏は2億円を資金出資して新会社を設立する。
設立後、会社は銀行より3億円を借り入れて、テナントビルなどの収益物件を購入する。
物件は建物の割合が大きいものを選ぶ。
購入直後の会社の貸借対照表(A表)をもとに財産を相続税評価額で評価する(B表)とおおむね次の図表のようになったとする。


新会社は、相続税評価額において資産額より借入額のほうが多くなり、株式評価額はゼロとなるわけである。
以上は1例だが、次の図表のように対策を組み合わせていく必要がある。




不動産を有効活用した相続税対策

経営者の乙氏は、妻と子供2人の家族構成で次のような財産を所有しているが、モータープールの土地の上に建築資金を全額銀行から借り入れて賃貸マンションを建設した場合に、財産の相続税評価額および相続税は次のように変わる。
(対策前) (対策後)
土地A 自宅 1億円 土地A 自宅 1億円
土地B

モータープール

5億円 土地B

マンション用地

3億9,500万円
建物 自宅 2,000万円 建物 自宅 2,000万円
    建物 マンション 2億1,000万円
自社株 1億8,000万円 自社株 1億8,000万円
預金等 5,000万円 預金等 5,000万円
ゴルフの会員権 2,000万円 ゴルフの会員権 2,000万円
財産合計 8億7,000万円 財産合計 9億7,500万円
    借入金 △5億円
課税財産 8億7,000万円 課税財産 4億7,500万円
相続税額 2億7,450万円 相続税額 1億725万円
配偶者の税額 0円 配偶者の税額 0円
子供たちの税額 1億3,725万円 子供たちの税額 5,362.5万円

(注)配偶者は、遺産の2分の1を取得するものと仮定している。

このように相続税額は、対策後には大幅に減少することとなる。この事例で、もし妻が先に死亡すると、子供2人の相続税は、相続税対策前では3億600万円、対策後では1億2,800万円となる。
このように不動産の有効利用による相続税対策は、ドラスティックな結果となる。
しかし、マンションやアパート経営には経営上のリスクと管理というわずらわしさが伴う。不動産経営による相続税対策の場合には、資金の収支計算が非常に重要となる。

著者:中村 敏彦(公認会計士・税理士)
監修:税理士法人A.Iブレイン
2013年4月末現在の法令等に基づいています。