ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

息子の結婚披露宴を兼ねた役員就任披露パーティを開催したい
 税務のみならず、今後への影響について慎重な検討をする。

税務上の取扱いとしては、法人としての支出が妥当なパーティ費用の場合は、交際費として扱われる。しかし、その支出が役員個人で負担すべきものであるなら、その役員に対する給与(賞与)となる。

<< 問題含みの会社負担 >>

このため、結婚披露パーティを会社で開催することは、問題があるように思われる。
冠婚葬祭でいえば、偉大な業績を残した経営者や役員に対する社葬の場合、社会通念上相当と認められる部分については交際費ではなく損金に算入することが認められている。
しかし、結婚披露パーティについて、その人の過去の業績に関係なく費用を会社が負担したとなると、本来個人が負担すべき費用を会社が負担したと判断されるだろう。
となると、その費用は息子への役員賞与あるいは父親である社長への役員賞与と認定される恐れも出てくる。つまり、個人については所得税や住民税、支出した法人側では役員賞与は損金とならないため、法人税、住民税、事業税が課税されることになるわけだ。
もう一つ問題となるのは、役員就任披露との兼ね合いだ。役員就任披露パーティは、税務上、会社の費用として認められるだろう。ただし、この場合はあくまで交際費となるため、基本的には損金にならない費用であると考える必要がある。
ここまで、結婚披露パーティと役員就任披露パーティを区分して考えてきたが、実際にはその区分は難しいと思われる。
役員就任披露を兼ねていても、会社行事とはみなされず、パーティのすべてが結婚披露パーティであると判断される可能性すらあるのだ。
こうなると税の負担は相当なものになるため、実施しないのが無難といえるだろう。

<< 税務以外の重要問題 >>

税務上の問題のほかにも、このパーティ開催は経営上の問題を引き起こす可能性がある。
自分の息子に限って役員就任披露パーティを開催するということは、社内で息子だけを特別扱いしている表われと解釈される可能性が高い。
私がお付き合いしている会社では、役員に就任しても、取引先に文書で報告をする程度で、就任披露パーティをするというケースはない。通常、役員に就任したばかりとなると、平取締役であろう。会社として平取締役の就任披露パーティを開催するということはまずありえないはずだ。
もし息子が、他の役員や従業員に抜きん出て、一際目立った成果を残しているのなら問題ないかもしれない。
しかしそうでないのであれば、特別扱いすることで、かえって社内で信望を集めるということが難しくなるのではないだろうか。
それでは、将来、後継者として経営を引き継いだとき、役員や社員の心は離れていってしまい、後継者自身が苦労することになりかねない。そのような意味からも、できれば役員就任パーティは開催しないほうがよいだろう。それでも、どうしても披露パーティを開きたいというのであれば、今後への影響を慎重に検討したうえで開催すべきものと考える。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。