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事業承継と相続対策

相続時精算課税制度の適用要件は?
 相続時精算課税制度の適用は、贈与する者が65歳以上であるとともに受贈する者が20歳以上であることに加え、申告時に選択届出書を提出することが要件となっています。


<< 相続時精算課税制度には年齢要件がある >>

相続時精算課税制度の適用対象者は、次のように定められています。
・贈与者-贈与した年の1月1日において65歳以上である者
・受贈者-贈与者の推定相続人である直系卑属のうち贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者
このうち受贈者の要件である 「推定相続人」とは、その時点で相続があったと仮定した場合に相続権のある者ということです。したがって、通常の場合は、65歳以上の親から20歳以上の子に贈与があった場合に相続時精算課税制度の適用を受けることができます。
もっとも、受贈者は推定相続人のうち 「直系卑属」とされていますから、子がすでに死亡している場合の孫(いわゆる代襲相続人)もこの制度の適用を受けることができます。
もちろん、この場合の孫も20歳以上という年齢要件を満たさなければなりません。
このほか、養子も推定相続人である直系卑属ですから、年齢要件を満たせば、制度の選択が可能です。
なお、贈与者の配偶者は推定相続人ですが、直系卑属ではありませんから、この制度は適用されません。

<< 贈与税の申告時に選択届出書を提出する >>

財産の贈与者が65歳以上の親、その受贈者が20歳以上の子という場合、贈与税の課税方法は、いわゆる暦年課税方式(基礎控除額110万円・累進税率適用)と相続時精算課税制度のいずれかになります。
このうち相続時精算課税制度は、受贈者の選択により適用され、その適用を受けるには、贈与税の申告期間内(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで)に、贈与税の申告書とともに「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
なお、この選択届出書の効力は、贈与者である親の相続時まで継続することとされています。したがって、この制度の適用を受ける最初の贈与時に選択届出書を提出すれば、その後のその親からの贈与は、自動的にこの制度の対象になります。

<< 選択届出書の撤回はできない >>

ところで、相続時精算課税選択届出書を提出すると、その届出書の撤回はできないこととされています。
要するに、いったんこの制度を選択すると、その贈与者からのその後の贈与については、いわゆる暦年課税方式(基礎控除額110万円・累進税率適用)に戻ることはできないということです。
このような相続時精算課税選択届出書の効力から見ると、届出をした後のその親からの贈与は強制的にこの制度が適用され、親の相続時には贈与財産のすべてが相続財産に合算されて相続税が計算されることになります。
このため、相続時精算課税制度の選択にあたっては、制度の適用を受ける場合の贈与税のほか、贈与財産の価額が相続税の課税対象になることによる相続税も考慮して、その選択が有利になるかどうかを判断する必要があります。

著者
小池 正明(税理士)
2013年6月末現在の法令等に基づいています。