ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

事業承継時に自社株はどう評価されるか
 非上場株である場合の自社株の評価、非上場株の評価額を下げる方法を合わせて検討すると、次のようになる。

<< 非上場株の評価法 >>

非上場株評価の手順
取引相場のない株式の評価は、会社の規模で評価方法が決められており、まず会社が大・中・小会社のいずれに該当するかを次の図表のとおり、会社の従業員数、総資産価額などによって決定する。

次に評価する株主が、大株主のようにその会社に対して支配力があれば「原則的評価方法」により評価し、支配力がなければ簡易な評価方法である「配当還元方式」でよいことになる。
原則的評価方法には、次の3種類があるが、その方式の選択は会社の規模により決められている。
1.類似業種比準価額方式
2.純資産価額方式
3.1と2の併用方式

類似業種比準価額方式
この方式は、同業種の上場会社の株価に比準して計算する方式で、主として大会社の評価を行なうときに用いられる。
類似業種比準価額は、次の算式のように、配当、利益、純資産を上場会社に比準して計算し、さらに会社の規模に応じた斟酌率により算出される。( )書きは設例のための数値である。


純資産価額方式
この方式は、会社が財産を処分して清算した場合に、1株いくら価値があるかという立場から評価する方法である。
会社所有のすべての財産を時価(相続税評価額)により評価替えを行ない、1株当りの純資産価額を計算するものであり、時価への評価替えによる評価益については清算所得に対して法人税等相当額(42%)が純資産価額から控除される。その算式は次のとおり。

大会社以外の中会社、小会社の評価では類似業種比準価額方式と純資産価額方式との併用により会社の評価を行なう。
この2つの評価方法の按分割合をLといい、大きい会社ほどLの割合は大きくなり、類似業種比準価額方式のウエ-トが高くなる。併用方式の算式は次のとおり。
・1株当り株価=類似業種比準価額×L+1株当り総資産価額×(1-L)

配当還元方式
会社に対して支配力のない株主、すなわち同族株主等以外の株主や同族株主であっても持株数の少ない株主については、会社の大小に係わらず次の算式による計算が認められている。


<< 非上場株の株価引下げ法 >>

評価額の引下げの方法
1.設例による類似業種比準価額方式における評価引下げの方法
前掲の類似業種比準価額方式の設例の1株当り評価額は、1,470円だが、会社が次のような株価引下げ策をとったとすれば、対策後の株価は次のとおりになる。
・ 評価する直前2期間の配当を引き下げるか無配とする。設例での配当をゼロとする。
・収益の高い部門を新会社に移し、毎年の利益を減らす。とくに評価する直前期の利益を引き下げる。設例では1株当り利益は10円とする。
・役員退職金を支給し、純資産額を減少させる。設例では1株当り純資産は500円になったとする。

このように類似業種比準価額方式の場合には、直前対策でも相当の効果がある。
2.設例による純資産価額方式における評価引下げの方法
前掲の純資産価額方式での設例の1株当り評価額は5,200円であるが、会社が次のような株価引下げ策をとれば、対策後の株価は、次のとおりとなる。
3億円を借り入れ、賃貸ビルを購入する。賃貸ビルの土地・建物の相続評価額は、1億5,000万円とする。

会社の資産価額は簿価で5億5,000万円、相続税評価額で5億円となり評価差益は発生せず、相続税評価額5億円から負債の4億円を差し引いたものが純資産価額となり、1株当り株価は2,500円となる。
純資産価額方式における対策には、一般的に時間がかかる。
直前対策としては、役員退職金を支給して純資産を減らす方法がある。

著者
中村 敏彦(公認会計士・税理士)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。