ビジネスわかったランド (経営・社長)

事業承継と相続対策

社員が会長である父の顔色ばかりを窺っている
 各人の機能を考えるとともにゼロからの社風作りをする。

創業者からの事業承継は、跡を継ぐ者にとって困難をともなうことが多い。
それまで強烈なリーダーシップを発揮してきたトップが代わるわけだから、当然不安定な時期といえるだろう。
とくに中小企業の場合は、先代が退いても番頭格が残り、古参社員も多くいる。
しかし、いままでと同じやり方で取り組んでいては成長は果たせない。時代に合わせて手法も変え、新事業を立ち上げていく必要があるのだ。

<< ベテラン社員をどう活かすか >>

二代目の社長よりも創業者の会長のほうばかりを向いている古参社員は、辞めてもらうという考え方もある。
たしかに手っ取り早い方法に見えるが、私はこの方法には賛同しない。というのは、事業の転換期にこそ、経験豊富な社員に支えてもらわなければならないからだ。
たとえば、長年付き合いのあるお客さんへのサポート、仕入先幹部との折衝など、ベテラン社員にしかできない仕事はある。私も、大手の取引先を回る際に、馴染みのある古参社員に同行してもらい、スムースに事が進んだ記憶がある。
若手が新規事業を立ち上げる一方で、古参にそれまでのビジネスを維持してもらう。それぞれの機能を考えて、適切な役割を与えるのが二世経営者の仕事ではないだろうか。

<< 高い志と強い覚悟を >>

あなたが、会長である父親が院政を敷くと考えているのであれば、社内を掌握することは限りなく不可能に近い。まず最初のとっかかりは、自分が創業者であると思えるかどうか、高い志と強い覚悟をもてるかどうかにかかっている。そう思えるのであれば、壁を乗り越えるアイデアはどんどん湧いてくる。
20年後の会社の経営責任をとれるのは、二代目社長であるあなただけ。ここは肚を決めて、改革を断行することを宣言し、自分の覚悟や志を社内に訴え続けるしかない。
もし二代目にそうした姿勢が見えないようであれば、創業者である父親は院政を敷き続けるだろう。継ぐ者に確固たる信念が見えなければ、会社を任せられるはずがないのだ。
そして、むしろ、先代を「活用」することを考えていただきたい。古参社員に言いにくいことを代弁してもらうのだ。二代目が言うと角が立つことも、創業社長なら受け入れてもらえるということはよくあるのだ。
次に、社内的には退いた形をとってもらうこと。変革しようという時期に会長がいまだに経営会議に出ているようでは困るし、幹部を会長室に呼びつけて指示を出すようなことがあってはならない。社員に伝えたいことがあるのなら、社長であるあなたを通してもらうようにするべきだ。
会社経営について自問自答することで施策を打ち出し、ビジョンを具現化し、自分の考えを社内に浸透させることが大切だ。これによって、初めて名実ともに経営者としての信頼が得られる。小手先のテクニックで乗り切るのではなく、会社をもう一度ゼロから作り直すようなつもりで取り組むことが、会社の発展をもたらすと考えていただきたい。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。