ビジネスわかったランド (経営・社長)
経営計画の立て方・進め方
年度経営重点方針設定の手順は
年度経営重点方針は、図表のフローチャートの流れに沿って、次のように行なう。
年度経営重点方針設定のフローチャート
年度経営重点方針は、図表の流れに沿って、次のように策定する。
(STEP1)年度経営重点方針
年度重点方針は、自社の経営力分析、中長期目標、そして環境変化要因の3つから導かれる。
まず、自社の経営力分析からは、経営力強化に向けて、「翌年度計画における経営改善課題」を整理する。
次いで、環境変化要因の予測とその対応策の中から、「翌年度における対応策」を整理する。
さらに、中長期目標から「翌年度計画への取り込み」を整理する。
以上の3要素から拾い上げられた翌年度に取り組むべき事項を並べ、さらに今年度における経営方針の積残し課題を勘案し、翌年度の経営重点方針を設定する。
(STEP2)具体的施策
これらの蚕点方針のそれぞれについて、誰がどのように実行するか具体的計画を整理する。
(STEP3)組織化計画
最後に、この重点方針や具体的施策の実現を図るための組織体制を固める。この組織編成方針については、経営重点方針に組み込んでもよいし、また、組織編成方針として別途掲げてもよい。
<< 中長期目標から年度方針へ >>
年度計画は中長期目標実現のための具体化計画
すでに述べたように、年度計画は中長期目標を実現するための、当年度に実現すべき計画である。3年後あるいは5年後の達成すべき目標を完遂するために、今年度はどこまで到達しておかなけらばならないか、そして、このためにどのような方針で、具体的にどのような行勤をとらなければならないか、その方針を明らかにしたのが年度経営重点方針である。
それは、中長期目標を実現するための、
(1) 当年度の目標
(2) 目標実現のための重点方針
そして、
(3) 方針の具体的な実行計画
さらには、
(4) 方針実現のための組織編成方針
を含めたものである。
ただし、年度目標は、通常、予算を設定した後に設定するので、この段階では重点方針と具体的施策、そしてその実現のための組織編成をまとめる。
年度方針は社長の方針
経営方針は、社長方針でもある。最高責任者としての社長が全社員の行動指針として経営重点方針を示すもので、これに基づいて各部方針が立てられ、さらに、課、係、グループの方針へと展開されていくわけである。
それは全社員の行動の拠り所となるものであり、これによって全社をまとめて一定の方向に導くためのものである。
当然のことながら、トップ方針が適切でなければ、組織の下位の方針も適切性を欠いてしまう。それだけに、社長は全社の現状をよく踏まえて客観的に判断し、各部門や各階層から情報を収集しながら社長の責任で最終決定をする。
経営方針のタテの連鎖
全社の経営重点方針は、これを実現するための部の方針に展開され、これはまた、課の方針に、そして係の方針に下ろされて、最終的には個人の実行目標に下ろされていく。
この方針はタテの連鎖といわれるもので、上から末端まで、依るべき方針と、そのための実行課題という関係で結ばれていなければならない。
方針がこのようにタテの連鎖で設定されるように、予算も全社の予算から部門の予算を通して個人の予算まで、タテの連鎖が図られていなければならない。
全社の目標と方針および予算は部門を通して各個人にまで鎖状につながっており、個人の目標が達成されて部門の目標が達成でき、その結果全社の目標が実現できるという関係になっている。
<< 前年度実績の反省と積残し課題 >>
反省は成功の母
年度重点方針を立てるにあたって、前年度の反省と積み残し課題を整理してみなければならない。それは、
(1) 1つは、前年度、実行できなかったもので、今年度も引き続き必要と思われる課題については継続して取り上げる必要があること
(2) もう1つは、この場合に、前年度に実現できなかった原因を整理分析し、今年度は実現できるように社内の整備や体質の改善をする必要があること
の2つである。
前年度の経営重点方針のうち、実現できていない項目を、原則としてすべて翌年度方針に取り込んでいるために、毎年、ほぼ似通った重点方針を掲げる結果となっている企業がある。しかし、これでは、いかに掲げられた方針が、いままで実行できていなかったかを表わすだけであり、社員も変わりばえしない方針に、新鮮な気持ちで新しい年度を迎えることができない。
前年度積残し課題の整理
前年度の反省と積残し課題の整理は、次のように行なう。
(1) 前年度経営重点方針のチェック……実行できたものとできていないものを整理する。実施できたものはその成果を判断し、方針設定が間違っていなかったかどうか確認する。
(2) 実施できなかったもの、あるいは十分でなかったものについてはその原因を明らかにする。
すなわち、
・方針設定や具体的施策の設定のしかたに問題があったのか
・チェック、フォローなど、実施管理に問題があったのか
・あるいは担当者に問題があったのか
を明らかにする。これを行なうのは、当然のことながら、原因のいかんによって取るべき対策が異なるからである。
(3) 翌年度に取り組むべき課題を、前年度の反省を踏まえて、過ちを繰り返さないような対策を含め、重点方針、あるいは具体的施策として設定する。
原因に応じた対策の選択
たとえば、前年度に、「新規市場の開拓」という方針を設定しておきながら十分な成果が上がらなかった原因として、次のようなことがあったとしよう。
(1) 営業員が退職してしまって、手が足りなくなり、開拓どころではなかった。
(2) 毎月開拓活動をやっていたが、力不足で開拓できなかった。
(3) 開拓しても給与や賞与に影響がないから、あまり真剣にやらなかった。
(4) 競合企業が新製品をもって積極的な販売促進をしてきたので実らなかった。
この他にも原因はあったかもしれないが、主な原因がこれらのことであったとしたら、翌年度はどのような方針設定をしたらよいだろうか。
(1)については、当然のことながら人材の補充が対策として取り上げられなければならない。もし、人材の補充が来年度も見込まれなければ、他の部門から人材を引き抜いてくるか、あるいは現在の市場担当の人員を減員してでも新規市場開拓に人員を回す計画を立てなければならないであろう。
(2)が原因であれば、人材の育成を進めることが必要となる。
(3)は、給与制度、業績評価や人事制度の見直しにより、やり甲斐のもてるシステムに改善することが先決である
(4)は、競合企業の販売戦略に対抗できる自社の販売政策を立てるとか、あるいは競合他社の販売促進戦略に負けないようなセールス力の強化などが課題となる。
このように、原因の内容に応じて翌年度の対策を構ずることが必要である(図表2参照)。
<< 年度重点方針の設定で全社の意思統一を導く >>
年度経営方針の構成
年度方針は、
(1) 目標
(2) 重点方針
(3) 具体的施策
の3つの体系で設定する。そのうえで
(4) 組織編成方針
を加える。ただし、この組織編成方針は(2)の経営重点方針の中に含めてもよい。
全社目標設定の着眼点
年度目標は、翌年度に達成すべきレベルであり、定量的な目標と定性的な目標とがある。
定量的な目標は、数字で表わした目標であり、これは貨幣価値で表現した目標と非貨幣的目標に分けることができる。
貨幣的価値で表わした目標は、
・売上高
・経常利益
などの金額によるもの、
・労働生産性
・1人当り人件費
など生産性に関わるもの、さらに、
・株主資本比率
・流動比率
など経営諸比率で表わしたものなどがある。
他方、非貨幣的な目標は、たとえば労働時間、休日日数、市場シェアなどがある。
次に、定性的な目標では、
・販売力を強化する
・迅速な意思決定ができる組織風土への改革
・代理店ルートから直販ルートへの転換
・品質保証体制の確立
といったような、計数では表わせないが、今年度に達成したい、あるいは実現したい、企業レベルとして表わされたものがある。
また、目標には、達成すべきレベルだけでなく、それが達成できたときの報奨を掲げると全社の動機づけに役立つ。
たとえば、利益額が○○○万円以上の場合には成果配分を出すとか、特別休暇を設ける、あるいは全社で海外旅行する、といったように、達成の暁の報奨を明確にする企業も少なくない。
年度重点方針の取り上げ方
(1) できるだけ具体的に
方針は、スローガンのような抽象的なものより、具体的なものが望ましい。
「営業力の強化」よりは、「セールス能力の開発」とか「提案セールスの実践」のほうがわかりやすい。
「業務品質の向上」なども、何となくわかるものの、実際にどのような考え方で、どんな行動をとったらよいかわかりにくい。「ミス、ロスの排除」とか、「作業標準の遵守」など、より具体的な方針でありたい。
(2) 各部門、各人に関わりがあるように
年度重点方針は、会社の全員に何らかの関係があるように項目を選択することが大切である。たとえば、重点方針が、販売や生産に関わる事柄だけだと、生産、販売以外の総務などの間接部門の人は「自分に関係ない」ということになってしまう。これでは全社方針としては不十分である。
重点方針の中に、たとえば、業務品質の向上とか、提案制度の活発化などのようなテーマを入れておけば、間接部門の人にも関わりがあり、全員が方針に参加することとなり、全社の意思統一につながりやすい。
(3) 重点的に
方針や具体策は多いほど良いというものではない。的確なテーマを、数少なく設定することがポイントである。数少なくといっても、すでに述べたように全社員が何らかの関わりが持てることが前提である。そもそも「重点方針」なのであるから、網羅的に掲げても意味がない。数多く掲げることが結果として何もやらないことにならないように、重点的に選択してほしい。
具体的施策設定の方法
重点方針を具体化したものが具体的施策である。これは重点方針実現のための具体的な実行課題である。
1つの方針を実現するための具体的な実行項目は3~5項目になるのが普通であり、重点方針が3つあれば、具体的な施策は10~15ぐらいになる。
具体的に、できれば、5W1Hまで煮つめられれば理想的だが、全社の具体的施策は項目だけとして、より詳細なものは各部門計画の中に吸収してもよい。
<< 年度の組織編成計画 >>
方針の実現は組織と人で決まる
翌年度の経営重点方針や具体的施策を実現できるか否かは、組織編成のあり方に大きな影響を受ける。
組織編成で考えなければならないのは、組織機構と適正配置の2つである。
なお、組織編成方針については、年度重点方針の中に組み込んでもよいし、また、重点方針とは別に、翌年度の組織編成方針として、別に取り上げてもよい。
組織機構の編成
組織機構は、業務遂行における縦、横の業務分担と責任権限の問題である。翌年度の計画を遂行するために必要な部門編成を固めるとともに、それぞれの部門責任者や担当者の責任権限を明確にする。
部門編成については、新しい事業部の新設、部門の廃止、生産と販売を統合した事業部制への移行、企画部などスタッフ部門の設置、部課長制の排除によるフラット組織編成、グループ組織編成などがある。
また、責任権限については、権限の委譲や集中化、特定権限の移行などによって、より迅速、的確な対応が図れる組織機構に改善することである。
もう1つ、組織編成でぜひ考えておかなければならないことは小グループ化である。上からの押し付けでなく、自主的な活動ができるフレキシブルな、人間的な組織編成を作ることが鍵である。この原点が小集団にある。
ドイツのパートナーシャフト経営でいう「共に知り、共に話し、共に働く、そして共に感じる」小集団は、コミュニケーションを深め、集団を活性化させ、自己啓発を促し、さらに隣の集団まで活性化を促すからである。
適材適所の人事配置
組織機構をいくら変えても、部門の責任者や担当者 柑の力が不足していては期待どおりの成果は望み得ない。
問題は人である。
そこで、再編成した組織機構が、狙いどおりの成果をあげるために、現在の人事配置が適当であるか否かを検討し、必要な人事再配置を行なう。
人事再配置の狙いは、経営重点方針を完遂することとあわせて、人材の育成の2つの観点から行なわなければならない。
後者の意味からは、むしろ中長期目標にそって計画的な人事配置やローテーション、あるいは昇格、昇進を考えることが必要である。
著者
天明 茂(公認会計士、宮城大学名誉教授)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
年度経営重点方針設定のフローチャート
年度経営重点方針は、図表の流れに沿って、次のように策定する。
(STEP1)年度経営重点方針
年度重点方針は、自社の経営力分析、中長期目標、そして環境変化要因の3つから導かれる。
まず、自社の経営力分析からは、経営力強化に向けて、「翌年度計画における経営改善課題」を整理する。
次いで、環境変化要因の予測とその対応策の中から、「翌年度における対応策」を整理する。
さらに、中長期目標から「翌年度計画への取り込み」を整理する。
以上の3要素から拾い上げられた翌年度に取り組むべき事項を並べ、さらに今年度における経営方針の積残し課題を勘案し、翌年度の経営重点方針を設定する。
(STEP2)具体的施策
これらの蚕点方針のそれぞれについて、誰がどのように実行するか具体的計画を整理する。
(STEP3)組織化計画
最後に、この重点方針や具体的施策の実現を図るための組織体制を固める。この組織編成方針については、経営重点方針に組み込んでもよいし、また、組織編成方針として別途掲げてもよい。
<< 中長期目標から年度方針へ >>
年度計画は中長期目標実現のための具体化計画
すでに述べたように、年度計画は中長期目標を実現するための、当年度に実現すべき計画である。3年後あるいは5年後の達成すべき目標を完遂するために、今年度はどこまで到達しておかなけらばならないか、そして、このためにどのような方針で、具体的にどのような行勤をとらなければならないか、その方針を明らかにしたのが年度経営重点方針である。
それは、中長期目標を実現するための、
(1) 当年度の目標
(2) 目標実現のための重点方針
そして、
(3) 方針の具体的な実行計画
さらには、
(4) 方針実現のための組織編成方針
を含めたものである。
ただし、年度目標は、通常、予算を設定した後に設定するので、この段階では重点方針と具体的施策、そしてその実現のための組織編成をまとめる。
年度方針は社長の方針
経営方針は、社長方針でもある。最高責任者としての社長が全社員の行動指針として経営重点方針を示すもので、これに基づいて各部方針が立てられ、さらに、課、係、グループの方針へと展開されていくわけである。
それは全社員の行動の拠り所となるものであり、これによって全社をまとめて一定の方向に導くためのものである。
当然のことながら、トップ方針が適切でなければ、組織の下位の方針も適切性を欠いてしまう。それだけに、社長は全社の現状をよく踏まえて客観的に判断し、各部門や各階層から情報を収集しながら社長の責任で最終決定をする。
経営方針のタテの連鎖
全社の経営重点方針は、これを実現するための部の方針に展開され、これはまた、課の方針に、そして係の方針に下ろされて、最終的には個人の実行目標に下ろされていく。
この方針はタテの連鎖といわれるもので、上から末端まで、依るべき方針と、そのための実行課題という関係で結ばれていなければならない。
方針がこのようにタテの連鎖で設定されるように、予算も全社の予算から部門の予算を通して個人の予算まで、タテの連鎖が図られていなければならない。
全社の目標と方針および予算は部門を通して各個人にまで鎖状につながっており、個人の目標が達成されて部門の目標が達成でき、その結果全社の目標が実現できるという関係になっている。
<< 前年度実績の反省と積残し課題 >>
反省は成功の母
年度重点方針を立てるにあたって、前年度の反省と積み残し課題を整理してみなければならない。それは、
(1) 1つは、前年度、実行できなかったもので、今年度も引き続き必要と思われる課題については継続して取り上げる必要があること
(2) もう1つは、この場合に、前年度に実現できなかった原因を整理分析し、今年度は実現できるように社内の整備や体質の改善をする必要があること
の2つである。
前年度の経営重点方針のうち、実現できていない項目を、原則としてすべて翌年度方針に取り込んでいるために、毎年、ほぼ似通った重点方針を掲げる結果となっている企業がある。しかし、これでは、いかに掲げられた方針が、いままで実行できていなかったかを表わすだけであり、社員も変わりばえしない方針に、新鮮な気持ちで新しい年度を迎えることができない。
前年度積残し課題の整理
前年度の反省と積残し課題の整理は、次のように行なう。
(1) 前年度経営重点方針のチェック……実行できたものとできていないものを整理する。実施できたものはその成果を判断し、方針設定が間違っていなかったかどうか確認する。
(2) 実施できなかったもの、あるいは十分でなかったものについてはその原因を明らかにする。
すなわち、
・方針設定や具体的施策の設定のしかたに問題があったのか
・チェック、フォローなど、実施管理に問題があったのか
・あるいは担当者に問題があったのか
を明らかにする。これを行なうのは、当然のことながら、原因のいかんによって取るべき対策が異なるからである。
(3) 翌年度に取り組むべき課題を、前年度の反省を踏まえて、過ちを繰り返さないような対策を含め、重点方針、あるいは具体的施策として設定する。
原因に応じた対策の選択
たとえば、前年度に、「新規市場の開拓」という方針を設定しておきながら十分な成果が上がらなかった原因として、次のようなことがあったとしよう。
(1) 営業員が退職してしまって、手が足りなくなり、開拓どころではなかった。
(2) 毎月開拓活動をやっていたが、力不足で開拓できなかった。
(3) 開拓しても給与や賞与に影響がないから、あまり真剣にやらなかった。
(4) 競合企業が新製品をもって積極的な販売促進をしてきたので実らなかった。
この他にも原因はあったかもしれないが、主な原因がこれらのことであったとしたら、翌年度はどのような方針設定をしたらよいだろうか。
(1)については、当然のことながら人材の補充が対策として取り上げられなければならない。もし、人材の補充が来年度も見込まれなければ、他の部門から人材を引き抜いてくるか、あるいは現在の市場担当の人員を減員してでも新規市場開拓に人員を回す計画を立てなければならないであろう。
(2)が原因であれば、人材の育成を進めることが必要となる。
(3)は、給与制度、業績評価や人事制度の見直しにより、やり甲斐のもてるシステムに改善することが先決である
(4)は、競合企業の販売戦略に対抗できる自社の販売政策を立てるとか、あるいは競合他社の販売促進戦略に負けないようなセールス力の強化などが課題となる。
このように、原因の内容に応じて翌年度の対策を構ずることが必要である(図表2参照)。
<< 年度重点方針の設定で全社の意思統一を導く >>
年度経営方針の構成
年度方針は、
(1) 目標
(2) 重点方針
(3) 具体的施策
の3つの体系で設定する。そのうえで
(4) 組織編成方針
を加える。ただし、この組織編成方針は(2)の経営重点方針の中に含めてもよい。
全社目標設定の着眼点
年度目標は、翌年度に達成すべきレベルであり、定量的な目標と定性的な目標とがある。
定量的な目標は、数字で表わした目標であり、これは貨幣価値で表現した目標と非貨幣的目標に分けることができる。
貨幣的価値で表わした目標は、
・売上高
・経常利益
などの金額によるもの、
・労働生産性
・1人当り人件費
など生産性に関わるもの、さらに、
・株主資本比率
・流動比率
など経営諸比率で表わしたものなどがある。
他方、非貨幣的な目標は、たとえば労働時間、休日日数、市場シェアなどがある。
次に、定性的な目標では、
・販売力を強化する
・迅速な意思決定ができる組織風土への改革
・代理店ルートから直販ルートへの転換
・品質保証体制の確立
といったような、計数では表わせないが、今年度に達成したい、あるいは実現したい、企業レベルとして表わされたものがある。
また、目標には、達成すべきレベルだけでなく、それが達成できたときの報奨を掲げると全社の動機づけに役立つ。
たとえば、利益額が○○○万円以上の場合には成果配分を出すとか、特別休暇を設ける、あるいは全社で海外旅行する、といったように、達成の暁の報奨を明確にする企業も少なくない。
年度重点方針の取り上げ方
(1) できるだけ具体的に
方針は、スローガンのような抽象的なものより、具体的なものが望ましい。
「営業力の強化」よりは、「セールス能力の開発」とか「提案セールスの実践」のほうがわかりやすい。
「業務品質の向上」なども、何となくわかるものの、実際にどのような考え方で、どんな行動をとったらよいかわかりにくい。「ミス、ロスの排除」とか、「作業標準の遵守」など、より具体的な方針でありたい。
(2) 各部門、各人に関わりがあるように
年度重点方針は、会社の全員に何らかの関係があるように項目を選択することが大切である。たとえば、重点方針が、販売や生産に関わる事柄だけだと、生産、販売以外の総務などの間接部門の人は「自分に関係ない」ということになってしまう。これでは全社方針としては不十分である。
重点方針の中に、たとえば、業務品質の向上とか、提案制度の活発化などのようなテーマを入れておけば、間接部門の人にも関わりがあり、全員が方針に参加することとなり、全社の意思統一につながりやすい。
(3) 重点的に
方針や具体策は多いほど良いというものではない。的確なテーマを、数少なく設定することがポイントである。数少なくといっても、すでに述べたように全社員が何らかの関わりが持てることが前提である。そもそも「重点方針」なのであるから、網羅的に掲げても意味がない。数多く掲げることが結果として何もやらないことにならないように、重点的に選択してほしい。
具体的施策設定の方法
重点方針を具体化したものが具体的施策である。これは重点方針実現のための具体的な実行課題である。
1つの方針を実現するための具体的な実行項目は3~5項目になるのが普通であり、重点方針が3つあれば、具体的な施策は10~15ぐらいになる。
具体的に、できれば、5W1Hまで煮つめられれば理想的だが、全社の具体的施策は項目だけとして、より詳細なものは各部門計画の中に吸収してもよい。
<< 年度の組織編成計画 >>
方針の実現は組織と人で決まる
翌年度の経営重点方針や具体的施策を実現できるか否かは、組織編成のあり方に大きな影響を受ける。
組織編成で考えなければならないのは、組織機構と適正配置の2つである。
なお、組織編成方針については、年度重点方針の中に組み込んでもよいし、また、重点方針とは別に、翌年度の組織編成方針として、別に取り上げてもよい。
組織機構の編成
組織機構は、業務遂行における縦、横の業務分担と責任権限の問題である。翌年度の計画を遂行するために必要な部門編成を固めるとともに、それぞれの部門責任者や担当者の責任権限を明確にする。
部門編成については、新しい事業部の新設、部門の廃止、生産と販売を統合した事業部制への移行、企画部などスタッフ部門の設置、部課長制の排除によるフラット組織編成、グループ組織編成などがある。
また、責任権限については、権限の委譲や集中化、特定権限の移行などによって、より迅速、的確な対応が図れる組織機構に改善することである。
もう1つ、組織編成でぜひ考えておかなければならないことは小グループ化である。上からの押し付けでなく、自主的な活動ができるフレキシブルな、人間的な組織編成を作ることが鍵である。この原点が小集団にある。
ドイツのパートナーシャフト経営でいう「共に知り、共に話し、共に働く、そして共に感じる」小集団は、コミュニケーションを深め、集団を活性化させ、自己啓発を促し、さらに隣の集団まで活性化を促すからである。
適材適所の人事配置
組織機構をいくら変えても、部門の責任者や担当者 柑の力が不足していては期待どおりの成果は望み得ない。
問題は人である。
そこで、再編成した組織機構が、狙いどおりの成果をあげるために、現在の人事配置が適当であるか否かを検討し、必要な人事再配置を行なう。
人事再配置の狙いは、経営重点方針を完遂することとあわせて、人材の育成の2つの観点から行なわなければならない。
後者の意味からは、むしろ中長期目標にそって計画的な人事配置やローテーション、あるいは昇格、昇進を考えることが必要である。
著者
天明 茂(公認会計士、宮城大学名誉教授)
2007年12月末現在の法令等に基づいています。
キーワード検索
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