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朝礼

何が大切かを考えよう

夫の研究を第一に考える

江戸後期の天文学者・高橋至時(よしとき)は大坂御蔵番の同心を務めながら、家では天文学の研究に没頭していました。同心は下級役人で給与が少ないため、秋には庭の柿の実を売って家計の足しにしていました。ところが夜になると柿盗人が来るので、至時は不寝(ねず)の番をするのが常でした。
ある日、至時が勤めから帰ってくると、その柿の木が伐り倒されていました。妻がそうさせたのでした。怒った至時は妻に問い質(ただ)すと、妻は至時をしっかり見据えて、こう言ったそうです。
「あなたには今大事なご研究がありますのに、暮らし向きに必要とは申せ、この柿の木にむだに心をお遣いなされておられます。あなたが大事な時間をなくされるのを見るにしのびなく、こういたしました。お気にさわりましたならば、いくえにもお詫び申し上げます」
至時は座ったままじっと動きませんでしたが、しばらくして手をついて妻に頭を下げました。
「よく思いきってくれた。わたしも困ったことと思いながら、そこまで決心ができなかった。これで心おきなく研究に専念できる」
のちに幕府は寛政の改暦(かいれき)を断行することになったとき、高橋至時を幕府の天文方に抜櫂し、「寛政暦」を完成させました。
夫にとって何が最も大切かを考えて思いきった行動する妻、それを怒らずに感謝する夫――こういう夫婦であったからこそ大きな仕事ができたのです。見習いたいものです。