人間性無視の経営はだめ

以前営業で北関東のある会社を訪問したときのことです。応接室がオフィスの奥にあったので、オフィス内を通ったのですが、そのとき、雰囲気が他の会社とあまりにちがうので不審に思いました。
全体に沈滞した感じで、どの社員も机にしがみついて一生懸命仕事をしているふうでしたが、顔色がさえず、憂鬱そうに背を丸めて、同僚とほとんど会話も交わさず、命じられた仕事を機械的にこなしている、といった感じでした。
帰途、たまたまその会社の社員のひとりと一緒になったので、話を聞いてびっくりしました。
その会社では、デスクワークをする社員は、昼休みや、どうしてもやむを得ない場合を除いて離席が禁止されており、業務でちょっと席を離れる場合でも、その都度上司に許可を受けなければならない決まりだというのです。
さらに驚いたのは、トイレに立つ回数や時間まで規定されていたことです。トイレに行っていいのは、昼休みを除いて、午前中1回、午後2回まで、1回3分以内、使っていいトイレットペーパーは1回に10センチと決められているというのです。
その会社とは2度取引しましたが、3度目の取引の前に、あの会社は危ないという情報が入ったので、すぐに代金を回収して取引を停止しました。それからしばらくしてその会社は倒産しました。社員の自主性や人間性を無視した経営では長続きするはずがありません。

監修：　二木紘三