ビジネスわかったランド (営業・販売)

朝礼

本物の節約の意味

奉公人たちに暮れのボーナス

年2回のボーナスは勤める者にとって嬉しいものですが、奉公人たちにケチと言われ続けたあと、ボーナスを与えて節約の意味を悟らせた商人がいます。江戸後期の豪商、中山利右衛門です。彼は土佐高知藩御用達(ごようたし)となり、麻布の独占販売で富を築きました。
ある年の大晦日、奉公人たちは店の中を掃除したあと、「これだけの店を構えながら、食事といえば麦飯にタクアンばかり。薪も自分で割り、炭はひとつひとつ数えてからかごに入れる。これでは大晦日といっても、蕎麦ひとつ出まい」と、利右衛門の陰口を言い合っていました。
やがて、番頭から奥の広座敷へ行くようにと言われた奉公人たちは驚きました。そこには豪華な料理と酒ののった膳が並んでいたのです。
「さあ、遠慮しないで食べておくれ」という番頭の言葉に、みんなが喜んでご馳走を食べ、酒をくみ交わしました。そこへ、金包みをうず高く積んだ三方(さんぼう)をもった利右衛門が現れました。そして奉公人のひとりひとりに、労をねぎらいながら分け与えたのち、こう言いました。
「わしが常日ごろ、皆からケチだと言われても気にしなかったのは、本当の節約の意味をよく知っていたからじゃ。今分け与えた金包みにしても、皆が毎日、麦飯にタクアンで耐えてきたからこそできたものなのだ。立派な商人になるには、こうした心がけが必要じゃ」と諭して聞かせました。
それからは、主人の陰口をきく者はだれもいなくなり、仕事に励むようになったそうです。