説得しやすい場所がある

少し前のことですが、学生時代に私がいた研究室のA准教授が会社に訪ねてきて、新しくできる研究会の役員になってくれないかと頼まれたことがありました。
私は実務能力がないとか、業務多忙を理由に就任を断りました。するとA先生は「××川沿いの紅葉が見頃になりましたよ。気分転換に少し歩きませんか」と言いました。
A先生は、私が当社に入社するに当たってお世話になった方なので、断るわけにもいかず、いっしょに出ました。先生は歩きながら、「実務はO君がやるし、研究会は1カ月に1回、2時間ほどですよ。みんなが君の参加を求めているのです。無理なときには、メールで君の意見を聞いてみなに伝えるようにしましょう」と説得を続けました。
お世話になった方にそれ以上逆らうことはできず、結局引き受けることになってしまいました。
説得が成功するかどうかは、だれが、どんな場所で説得するかによってかなり違ってきます。私がもし会社の応接室で説得を受けたら、役員を受けなかったかもしれません。会社では、仕事が気になるし、電話がかかってくるなどして話が中断され、気が散るからです。
もし仕事で誰かを説得することが必要になったら、まず説得に集中できるような場所を選びましょう。次に、相手が断る口実を予想して、それへの対応をいくつか考えておきます。これで説得の成功率はぐんと上がります。一度やってみてください。

監修：　二木紘三