ビジネスわかったランド (営業・販売)

ちょっといい話

逆転の応対
逆転の応対
   JR新宿駅は、日本一乗降客が多い駅です。それだけに、さまざまなお客がいて、その応対にはひと工夫も、ふた工夫もいることになります。
   ある日のことです。若い駅員が構内を歩いていると、中年の男性が案内板でも探しているのか、キョロキョロあたりを見回しています。若い駅員は「お客様第一」とばかり、さっと近づいて笑顔で声をかけました。
   「お客様、どちらに行かれるんですか」
   振り返った客は急に怒った顔になり、大声でいいました。「どこへ行こうと余計なお世話じゃないか、うるさいんだよ、あんたは」
   若い駅員はムッとしました。でも、大勢のお客が様子を見守っています。ここで食ってかかれば他のお客の評判まで悪くしかねません。不快な思いを引きずったまま彼はその場を立ち去りました。
   彼は駅の事務室で、そのことを先輩に話してみました。先輩はベテランだけあって、聞き終わると次のようにアドバイスをしました。
   「大勢の客を味方につけてしまうことだね。この場合、中年の男性が悪いのはわかっているわけだから、キミは堂々と『申し訳ありません。何かお役に立てればと思ったものですから』と詫びてしまえばよい。大勢の客はさすがと感じて、キミに声援を送るよ。お客様対応というのは状況判断が大切なんだ」
   この先輩の一言で、若い駅員は目が開かれると同時に、胸のつかえもおりてすっきりしたのです。

監修
福田 健