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ちょっといい話

短所が武器になる
短所が武器になる
   一匹の鹿が、池の水面に映る自分の姿をしげしげと眺め、自分の角が美しいのに感じ入っていました。しかし、その美しい角に対して、足のやせて貧弱なことはイヤになるほどでした。
   「なんだってこう、わたしの足は醜いのだろうか」と、嘆いていたとき、不意に背後で鉄砲の音がしました。いつの間にか近づいてきた猟師が、鹿を狙って発砲したのです。何発かタマが後を追ってきましたが、鹿は何とか無事に逃げ切ることができました。
   安全なところまで来ると、鹿はふと立ち止まり、自分の足を見つめました。そして、気がついたのです。危険から自分を守ってくれたのは、醜いと嘆いてばかりいた足だったことを。そして、自慢の美しい角は、何の役にも立たなかったことを。
   私たちは、自分の美点を密かにに自慢したり、短所を嘆いたりします。しかし、それらは相対的なもので、勝手に思い込んでいるにすぎません。
   時と場合によっては、短所が逆に武器にもなり得るのです。

監修
福田 健