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ちょっといい話

親が手本
親が手本
   家庭における「しつけ教育」の不在が、久しく言われています。たとえば、あいさつや返事といった基本が、親から子へと教育されていないために、それらを身につけずに学校を卒業する若者が急増しています。
   吉川英治は『宮本武蔵』などの作品で親しまれている国民的作家ですが、しつけに関して「まず、親がやってみせる。そこから教育はスタートする」という趣旨のエッセイを書いています。
   朝食をすませた子供が学校へ行く前に、吉川さんの部屋のふすまを開けて「行ってきます」と声をかけます。吉川さんは、執筆中でも必ず筆をおいて顔を向け、「行っておいで。今日は雨だから、車に気をつけて」というように、返事をするそうです。執筆に夢中で、どんなに筆をおくのがつらくても、必ず、いったん筆を休め、返事をします。子供は、この父親の姿を見て、返事を覚えるのだそうです。
   自分では何もしないくせに、口うるさく注意するだけでは、子供にしろ部下にしろ、思うとおりには動いてくれません。まず、自分から実践することが大切です。

監修
福田 健