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リーダーシップ

立てるから立てられる
立てるから立てられる
   会社の中を見渡すと、上司と部下というタテの関係だけでなく、「技術の神様」がいたり、「宴会部長」が活躍したり・・・と、仕事のラインを離れたインフォーマルな結びつきも、重要であることがわかります。
   私の経験でも、成績のいい部署、チームワークが取れているグループほど、ライン以外の結びつきも緊密でした。
   トンプソンという人は、ある狩猟民族の研究を通して、集団には、命令を下すボスと実行するハンター、祭事を行なうシャーマン、道化であるトリックスターの4つの役割が普遍的に見られる、という説を発表しています。
   乱暴を承知で会社に当てはめると、ボスは上司、ハンターは部下、シャーマンは一芸に秀でるなど何かカリスマ性がある人、道化は“混ぜ返し役”ということになるでしょうか。
   確かに、会社の中でも、命令・実行のタテの関係だけではギスギスして息をつくことさえ、できなくなります。時に長老社員に“縄のれん”や“赤提灯”の儀式によって慰められたり、混ぜ返し役の意表を突く発言に大笑いしたりして、適度の緊張とゆとりが保たれる職場が作られていくのでしょう。
   先輩の前野さんは、実にそのへんの呼吸が上手い人でした。仕事は人一倍ハードに進めましたが、時には、映画に詳しい部下を先生役にして映画談義に花を咲かせたり、「この話は彼のほうが詳しいから」と部下にみんなの前で発言させたりと、場面場面で、その場に相応しい人を引っ張り出して、盛り立てます。
   部下のほうは、ある時はシャーマン役で、またある時は道化役で脚光を浴びますから、当然、普段の仕事でも張り切ります。
   「人を立てれば、立てられる」が前野さんのモットーでしたが、前野さんは、私が接した上司のなかでも最も人気と実績が高かった人でした。

監修
福田 健