ビジネスわかったランド (営業・販売)

貿易事務

トラブルを回避する輸出契約書の作成の仕方は
 お互いの義務と責任の範囲を明確にした契約書をつくり、きちんと相手のサインをもらうことが肝要である。

営業活動の結果、相手先から注文書が届いたら、あるいは注文の意思表示があったら、正式な注文を受ける前に「輸出の契約」を取り交わし、お互いの義務と責任の範囲を明確にしておくべきである。
なぜなら、輸出の場合もさまざまなトラブルが起こるからである。
輸出契約書は、SALES CONTRACTとかSALES NOTEなどのタイトルでつくる。作成方法は、輸入の場合の契約書と同様に、表裏一体構成として、表に契約の文章と該当する輸出取引に固有の条件や明細などを記載し、裏面に一般取引条項を記載してつくればよい(次の図表1、2参照)。


上掲の輸出契約書の裏面の見本の内容は、次のとおり。
GENERAL TERMS & CONDITIONS(一般取引条項)
(1)【出荷条項】貨物の出荷日は、運送書類の日付をもって明確な出荷日といたします。また、分割出荷あるいは積替えは、この契約書の表面に特段の記載がないかぎり認められるものといたします。
(2)【支払条項】買い手は、契約の締結された日から20日以内に、取消不能・変更不能の信用状を開設するものとし、その信用状の有効期限は、買取手続きのために出荷期限の日から少なくとも10日後にするものといたします。
(3)【検品条項】買い手が特別な輸出検査を希望するときは、その検査にかかる費用は買い手が負担するものといたします。
(4)【工業所有権に関する条項】売り手は買い手に対して、日本国内の工業所有権の侵害の場合を除いて、特許権・商標権・デザイン権・著作権・実用新案権などの工業所有権の侵害に対して一切責任を負わないものといたします。
(5)【不可抗力に関する条項】売り手は、火災、ストライキ、ロックアウト、戦争、天災、伝染病など、売り手の合理的な支配を越える原因によって契約が履行できなかったとしても、一切その責任を負わないものといたします。
(6)【クレーム条項】クレームがあるときは、買い手は貨物が輸入地の港あるいは空港に到着した日から20日以内に、権限のある公的検査機関の証明書を添付して、書面で売り手に通知するものといたします。また、隠れた瑕疵があるときは、3か月以内に通知しなければならないものといたします。もしも、何の通知もなされなかったときは、買い手はすべてのクレームを放棄したものとみなします。
(7)【貿易条件に関する条項】この契約に使われる貿易条件は、最新のINCOTERMS(取引の解釈に関する国際規則)の規定により解釈されるものといたします。
(8)【仲裁条項】この契約に関連して、売り手と買い手の間に生じた紛争や意見の相違などにより、不当に遅延することなくお互いの合意により解決できないトラブルは、日本商事仲裁協会の規則と手続きに従って、東京における仲裁により解決を図ることといたします。なお、その仲裁判断は最終的なものであり、お互いの当事者を拘束するものといたします。
契約書の作成も大切な貿易事務のしごとの一部である。
契約を取り交わすときは、輸入の場合と同様に、相手のつくった契約書をよく読みもしないでサインをするのではなく、相手より先に契約書をつくって相手のサインをもらって契約をすることが大切である。

著者
井上 洋(井上貿易事務所代表・貿易コンサルタント)