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貿易事務

輸入通関手続きと輸入の税金は
 輸入通関手続きは、「輸入(納税)申告書」とそれに関連する書類を作成、税関に申告するという流れであるが、専門の通関業者に手続きを代行してもらうのが一般的である。


手続きに必要な書類を通関業者に渡す
外国から輸入した貨物を引き取るためには、どのような貨物であっても輸入通関手続きをして、税関から許可を得なければ引き取ることはできない。
税関を無視して輸入すれば、密輸入となってしまう。
具体的な輸入通関手続きは、「輸入(納税)申告書」と呼ばれる書類を使って税関に申告し、税関の許可をもらい、税金を払って貨物を引き取るという手順を踏むが、現実には、これらの手続きは輸入者が自分で行なうのではなく、通関業者と呼ばれる通関手続きの専門業者に依頼して手続きを代行してもらうのが普通である(図表1参照)。

ちなみに、輸入通関手続きには、次のような書類がいる。したがって、輸入者のほうで用意すべき書類を揃え、通関業者に渡しておく必要がある。
(1) 輸入(納税)申告書
(2) 仕入書:INVOICE
(3) 運送書類(B/L:船荷証券あるいはAWB:航空貨物運送状)
(4) 保険料明細書
(5) 運賃明細書
(6) 梱包明細書:PACKING LIST
そのほかに、貨物の種類により次の書類が必要になる場合がある。
(7) 他法令の許可・承認証(他法令の該当貨物の場合)
(8) 特恵原産地証明書(特恵関税の適用を受けようとする場合)
(9) 減免税明細書(減免税の適用を受けようとする場合)

輸入関税と消費税がかかる
輸入貨物にかかる税金には、「輸入関税:CUSTOMS DUTY」と「内国消費税:INTERNAL TAX」がある。最近では、貿易の自由化や規制緩和が進んだおかげで、輸入関税のかからない貨物も多くなったが、輸入関税がかからない貨物でも内国消費税はすべての貨物にかかる。
具体的に、どのような貨物にどれくらいの関税がかかるかは実行関税率表(税関のホームページ=http://www.customs.go.jp/)で調べるか、税関に確認する必要がある。
内国消費税のほうは、すべての貨物に5%の消費税がかかる。
これらの税金の算定基準を課税価額というが、輸入関税の課税価額はCIF価額になる。そしてCIF価額に輸入関税を加えた金額の5%が内国消費税になる。
具体的な関税と消費税の計算方法は、図表2の税金の計算方法(税関のホームページ)に見られるとおりである。


輸入関税率には4種類あり
ところで、輸入関税の税率には、「基本税率」「協定税率」「特恵税率」「暫定税率」の4種類の税率があり、実際に適用される税率には優先順位が設けられていて、次の図表3ような順位で適用される。

特恵税率は、発展途上国からの特定の貨物など、法令で定める要件を満たす場合に適用される。
協定税率は、その税率が暫定税率や基本税率より低い場合に適用される。協定関税で一般的な税率としては、WTO(世界貿易機関)の設立に伴い平成7年から施行されているWTO協定税率がある。
暫定税率は、基本税率を適用することがそのときの経済状況に合わない場合に設定される。
なお、輸入通関手続きや輸入関税に関する情報については、税関、JETRO、日本関税協会などのホームページから必要に応じて最新の情報を収集する必要がある。

NACCSにより電子化が進む
通関手続きについては、かなり以前からNACCSと呼ばれる「通関情報処理システム」が使われ電子化されている。海上貨物の通関システムをSea NACCS、航空貨物の通関システムをAir NACCSというが、近年システムの更改と対象業務の拡大により利便性が高まっている。
1999年10月以降の新しいSea NACCSでは、輸入については入港から貨物の船卸・輸入申告・許可・国内への引取りまで、輸出にあっては貨物の保税地域への搬入から輸出申告・許可・船積・出港までの輸出入に関する一連の税関手続きが可能となり、また対象業務も拡大されている。
また、Air NACCSも同様の業務範囲をカバーしている。
ところで、NACCSは、厚生省の食品衛生法電算システム(FAINS)と農林水産省の植物防疫法/家畜伝染病予防法の電算システム(ANIPAS/PQNETWORK)がインターフェース化されている。近い将来には上記の輸入手続きのインターフェース化に加えて、港湾諸手続きをシステム処理している「港湾EDIシステム」と貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS )を接続して、NACCSを中心とした輸出入・港湾手続関係システムを連帯したワンストップ化が予定されている。
さらに、NACCSとINTERNETの接続やG7共通電子申請フォーマットの導入による国際的な手続きの標準化に向けた取組みも進められている。

輸入(納税)申告書の見本と書き方のポイント
次に、輸入(納税)申告書の見本と書き方を税関のホームページをもとにまとめておこう。

輸入(納税)申告書の書き方のポイントは、次のとおり。
・共通事項
1 記入は、すべて黒色のタイプまたはペンで行なう
2 記入は、和文または英文で行なう
3 訂正するときは訂正箇所を2本の線で消し込み、訂正箇所の上方に訂正事項を記入し、訂正印を押印する
・以下は、上掲図表4の輸入(納税)申告書の見本中の○囲みの数字に対応
(1) 申告する年月日を記入
(2) 申告する税関官署の名称を記入
(3) 輸入者自身が輸入申告をする場合に、申告者の住所、氏名(原則としてインボイスに記載されている荷受人)の記入、押印
(4) 貨物の仕出人(貨物を輸入者に送った者)の住所、氏名(原則としてインボイスに荷送人として記載されている者)の記入
(5) 通常の輸入の場合は、ICの枠内に ×印を記入
(6) 貨物が船(取)卸しされた港(空港)の名称を記入
(7) 貨物を積載してきた船舶(航空機)の名称を記入
(8) 貨物を積載してきた船舶(航空機)の入港年月日を記入
(9) 貨物が生産された国名を記入
(10) 貨物が船舶(航空機)に積み込まれた都市名及び国名を記入
(11) 船荷証券(B/L)(航空貨物にあっては AIR WAY BILL)の番号を記入。ただし、その貨物が保税運送された貨物の場合は、承認書の番号を記入
(12) 貨物が保管されている場所の名称を記入
(13) 税関相談官または窓口の職員に確認して記入
(14) 一般的な商品名(たとえば、インボイスの商品名)を記入
(15) 実行関税率表に基づき、「番号」欄には申告する貨物に対応する税表番号 (6桁)を、「統計細分」欄にはその統計番号(3桁)を、「税表細分」欄にはその細分番号を記入
(16) 実行関税率表に掲げられている統計単位を記入(2つの統計単位がある場合には、その双方を記入)
(17) (16)の「単位」により表示される数量を記入。その貨物の全量が単位に達しない場合には、左側の白抜き部分に「0」を 、単位未満の数値は右側の色刷り部分にそれぞれ記入
(18) CIF価格(輸入港までの運賃、保険料込みの価格、つまり輸入港到着価格)を日本円で記入
(19) 実行関税率表に基づき、その貨物に適用される税率を記入し、その適用区分に従って下の枠内に×印を記入。なお、無税の場合は「Free」と記入
(20) 申告価格(1,000円未満切捨て)に税率を乗じて得た金額を円単位まで記入 。この場合、1,000円以上は左側の白抜き部分に、1,000円未満は右側の色刷り部分に記入
(21) 消費税、酒税などの内国消費税および地方消費税が課される物品について、「適用法律区分」の枠内に×印を記入
(22) 申告価格に関税額(100円未満切捨て)を加えた金額を記入
(23) 内国消費税の税率を記入
(24) (20)と同様に計算し、円単位まで記入
(25) (24)に記入した消費税額から100円未満を切り捨てた金額を記入
(26) 地方消費税の税率を記入
(27) (25)の金額に税率を乗じて得た金額を円単位まで記入
(28) 各税目ごとに税額を計算し、各税目ごとにそれぞれの合計額(100円未満切捨て)を記入
(29) 貨物の外装の総個数、マーク及び番号を記入
(30) 輸入承認証などがあれば、その番号を記入
(31) 添付書類に応じて右の枠内「有」の欄に×印を記入
(32) 取引の内容によっては評価申告が必要であり、該当箇所に×印(包括申告 の場合には受理番号を含む)を記入

著者
井上 洋(井上貿易事務所代表・貿易コンサルタント)