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貿易事務

運送書類・航空貨物運送状(AWB(Air Waybill))とは
 航空貨物運送状は、船荷証券のように実質的に有価証券であり貨物の引換券であるという性格はなく、単なる貨物の運送委託証書(Consignment Note)であり、輸入者が貨物を引き取るためには開設銀行から貨物を引き取る権利を譲渡してもらう手続きが別途必要になる。


航空貨物運送状は単なる貨物の運送委託証書
航空貨物運送状は、貨物を飛行機で運ぶ際に、航空会社あるいはその代理店などが貨物を受け取った証拠として発行する運送書類であるから、基本的には使用目的から見ても船荷証券と同様の書類であると考えればよい。ところが、実は、船荷証券(B/L)と航空貨物運送状(AWB)の間には決定的な違いがある。
その最も重大な相違点は、船荷証券は実質的に有価証券であり貨物の引換券であるという性格をもっているが、航空貨物運送状は単なる貨物の運送委託証書(Consignment Note)であり、原則として記名式で発行されるので流通性もなく、引換券という性格をもたない運送書類である。
つまり、B/Lの場合は、それが指図式であれば貨物の所有権を移転することができるし、B/Lの所有者がすなわち貨物の所有者となるが、AWBの場合は、それを持っていても貨物を持っていることにはならないわけである。
したがって、信用状決済の場合などは、銀行がAWBを持っていても貨物を持っていることにならないから、AWBでは信用状の担保にならない。
そこで、信用状に基づいて飛行機で輸入される貨物の荷受人は、必ず信用状の開設銀行になる。なぜならば、開設銀行は、AWBでは信用状の担保にならないので、自らが荷受人となって貨物そのものを信用状の担保にしようとするからである。
そのようなわけで、信用状に基づいて飛行機で輸入される貨物は、常に信用状の開設銀行を荷受人として送られてくるので、輸入者が貨物を引き取るためには開設銀行から貨物を引き取る権利を譲渡してもらう手続きが必要になる。
その際に、貨物を引き取る権利を譲渡してもらうための書類を「Release Order」というが、銀行から貨物を引き取る権利を譲ってもらうためには、当然、手形代金(輸入代金)の決済が条件になる。なぜならば、銀行は権利を譲れば担保を失うことになるからである。

航空貨物運送状(AWB)には2種類ある
AWBには、航空会社が発行するMaster Air Waybillと、混載業者が発行するHouse Air Waybillの2種類がある。
一般に、航空貨物として輸出される貨物は、大量のまとまった貨物の場合は直接、航空会社に出荷が依頼される場合もあるが、通常は輸出者と航空会社の間に混載業者と呼ばれる航空貨物の専門業者が介在して、混載業者が輸出者の貨物をアレンジして航空会社に委託して出荷する。
混載業者とは、数多くの輸出者から集荷した貨物をまとめて航空会社に引き渡し、出荷の手配をする業者である。
混載業者の発行するHouse Air Waybillは、航空会社の発行するMaster Air Waybillに基づいて発行されるものであるから、それらの値打ちに何も違いはないが、なぜか、信用状の条件によってはHouse Air Waybillでは買取手続きができない場合があるので注意を要する。



著者
井上 洋(井上貿易事務所代表・貿易コンサルタント)