ビジネスわかったランド (営業・販売)

貿易事務

見積請求と輸入契約書の作り方は
 見積請求は次の見本を参考にメールで行ない、輸入契約書は次の見本を参考に相手より先に作成し、自社が有利な方向へリードするのがポイントである。


見積書の取り寄せ方
サンプルを検討した結果、輸入が決まったら、正式な注文を出す前に、そのための見積書を取り寄せる。見積りを要求することを一般に「PROFORMA REQUEST」といい、輸出者から送られてくる見積書を「PROFORMA INVOICE」という。
何のために見積りを取り寄せるかというと、輸入者が輸入を希望している貨物の明細を輸出者に伝え、価格や貿易条件・納期・運送方法などを確かめるためである。
外国の会社は、突然、何の前触れもなく価格や条件を勝手に変更する悪い癖がある。したがって、本格的な大量の注文を出すときには、それが2回目でも3回目でも、必ず見積りを取り直して、最新の見積書に基づいて注文するようにすべきであろう。
図表1に見積請求メールの見本、図表2に見積書の見本を示しておこう。

(Mailの内容)
拝啓
サンプルをお送りいただきましてありがとうございました。
早速ですが、下記のごとく初めての本格的な注文をしたいと思いますので見積書をお送りください。(半導体:5,000ユニット)
見積書を受け取り次第、注文を確定し支払いの手配をいたします。
できるだけ早目にお返事がいただけますよう、よろしくお願いいたします。
敬具

(Mailの内容)
拝啓
見積書番号:0022
わが社の製品に関心をおもちいただきましてありがとうございました。
ご要望にしたがって下記のごとくSEMICONDUCTORの輸出価格をお見積りいたします。
SEMICONDUCTOR 5,000ユニット 20万ドル
貿易引取条件:FOB NEW YORK AIRPORT(NEW YORK空港における本船渡条件)
支払条件:輸出者を受益者とするドル建て一覧払いの取消不能・変更不能の信用状によってお支払いください。
出荷条件:信用状の受領後2週間以内に出荷します。
梱包条件:通常のカートンを使った輸出梱包で出荷します。
有効期限:この見積書の有効期限は、上記の日付から2週間です。
わが社は、貴社が上記の見積りに満足されて、確定注文をいただけるよう期待しております。よろしくご検討ください。
敬具

輸入契約書の作り方
輸出者から見積書を受け取ったら、内容をよく検討する。そして、納得できない場合は、何度でも交渉する。交渉の結果として、納得できる内容の見積りになったら、次に、輸入のための契約を輸出者との間で取り交わす。
もちろん、すでに継続的に取引をしている相手であれば、輸入の度にいちいち契約を取り交わす必要はないが、初めて本格的な取引をする相手先とは事前に必ず契約を取り交わす。
なぜならば、海外との取引では、日本国内の取引では起こらないようなトラブルが発生する場合が多いので、少なくともトラブルの生じた場合の解決方法などを事前に決めておく必要があるからである。
実際に外国の会社と輸入取引をしてみると、たとえば、納期に関するトラブルや不良品に関するトラブルなどが頻発する。また、注文した貨物と違う貨物が送られてくる場合もある。
契約書のつくり方は、表と裏を使う両面構成で、表面には図表3の見本のように該当する輸入取引の契約文章・相手の住所と名前・注文内容・取引条件・サインをする欄などを記載し、図表4に示した裏面には「一般取引条項」としてトラブルが発生した場合の解決方法などを記載して作るのが一般的である。


(「一般取引条項」の内容)
GENERAL TERMS &CONDITIONS (一般取引条項)
(1)<SHIPMENT>(出荷条項):注文の貨物は、この契約書の表に書いてある期限内に出荷されなければなりません。もしも、輸出者が期限内に貨物を出荷できなかったときは、輸入者はこの契約を解除し損害を請求するものといたします。
(2)<WARRANTY>(保証条項):輸出者は、輸入者が注文した貨物が、仕様書・商品説明書・データ・見本あるいは本契約に定めるその他の要件のいずれも完全に満たすものであり、商品性があり、デザイン・素材・製作技術にも瑕疵がなく、輸入者と輸入者の顧客の意図する目的に適合しているものであることを保証するものといたします。そして、もしもクレームのあるときは、輸入者は隠れた瑕疵の場合を除き、貨物が最終仕向地に到着したら検品し、可及的すみやかに文書で損害を請求するものといたします。また、隠れた瑕疵のあるときは、たとえ輸入者からの通知が遅れても、いかなる場合も輸出者が責任を負うものといたします。
(3)<TRADE TERMS>(貿易条件に関する条項):この契約に使用される貿易取引条件は、とくに明記されたものがないかぎり、最新のINCOTERMS(取引の解釈に関する国際規則)の規定により解釈されるものといたします。
(4)<INDUSTRIAL PROPERTY RIGHT>(工業所有権に関する条項):輸出者は、日本国内であると他の国であるとにかかわらず、特許権・商標権・意匠権・著作権・パターン権あるいはその他の工業所有権の侵害に対し責任を負うものといたします。また、上記の権利に関して争いやクレームが生じたときは、輸入者は無条件にこの契約を解除する権利をもち、そこから生ずるどのような責任・負担にも関わらないものといたします。さらに、このことから生ずるすべての損失・損害は輸出者が補償し償うものといたします。
(5)<ARBITRATION>(仲裁条項):本契約もしくは本契約の違反により、あるいは違反に関連して輸入者と輸出者の間に発生し、お互いの当事者同士の合意によってすみやかに解決できないどのような紛争・意見の相違も、国際商事仲裁協会の規則に従って、東京における仲裁によって解決するものといたします。そして、その仲裁判断は最終的なものであり、お互いの当事者の両方を拘束するものといたします。
なお、輸入でも輸出でも、契約を取り交わすときは、相手の作った契約書にサインをして契約を結ぶのではなく、自らが相手より先に契約書を作り、相手のサインをもらって契約をすることが大切である。そうすれば有利な契約が結べる可能性が高い。

著者
井上 洋(井上貿易事務所代表・貿易コンサルタント)