ビジネスわかったランド (営業・販売)

貿易事務

荷為替決済のしくみは
 荷為替とは、いわば貨物の引換券の付いた為替手形のことであり、その決済のしくみは次のとおり。

貿易取引にはさまざまな人や組織が関わり、さまざまな書類も使われるが、まず初めに、ここでは話の内容をわかりやすくするため、貿易取引に関わる当事者を「輸入者」「輸出者」「船会社」「輸入地の銀行」「輸出地の銀行」の5者に絞って説明しよう。
また、使用する道具も「貨物」「B/L(船荷証券)」「荷為替手形」「代金」の4つだけを使って説明する。
さらに、貨物を輸出地から輸入地へ運ぶ手段としては、一般に船で運ぶ方法と飛行機で運ぶ方法があるが、ここでは船で運ぶことを前提に説明する。なぜならば、そのほうが貨物を運ぶ場所や書類の扱いなどがわかりやすいからである。
なお、このしくみの説明は、輸出者が輸入者の注文に応じて貨物を出荷するところから始める。次の図表1を見ながら読み進めていただきたい。


STEP1
まず初めに、輸出者は、輸入者から注文を受けた貨物を輸出梱包して船会社に渡す。輸出者は、貨物を輸入地に運ぶように依頼して船会社に引き渡すわけだが、ここで注意しなければならない重要なポイントがある。
それは、船会社は貨物を輸入者に届けるわけではなく、輸入地の「港」までしか運ばないということである。
つまり、輸出者の依頼で船会社によって輸入地に運ばれた貨物は、輸入地の港で輸入者に引き取ってもらうのを待つことになる。

STEP2
さて、STEP1で、輸出者から貨物を受け取った船会社は、貨物を受け取ったことを証明する書類として、B/L(船荷証券)と呼ばれる運送書類(Transport Documents)を発行して輸出者に渡す。
ところで、これも非常に重要なポイントになるが、このB/Lというのは単なる貨物の受取証(預り証)ではない。
実は、B/Lは、権利証券であり有価証券でもあるというような性格をもつ書類であるが、それよりも最も重要な性格は、B/Lは「貨物の引換券」だということである。
つまり、船会社は、輸出者から貨物を預かった証拠として貨物と引換えにB/Lを発行したわけであるが、それゆえに「船会社は、輸入地の港まで運んだ貨物を、このB/Lと引換えでなければ誰にも渡さない」という性格をもつ書類なのである。
したがって、船会社は、B/Lと引換えでなければ、この貨物を注文した輸入者にも引き渡してくれないわけである。

STEP3
一方、船会社によって輸入地に運ばれた貨物は、輸入地の港で輸入者に引き取ってもらうのを待っているわけであるが、すでに説明したように、船会社は、B/Lと引換えでなければ輸入者に貨物を渡さない。しかも、この時点では、B/Lは輸出者の手にある。
そこで、貨物を引き取るために「輸入者はどのようにしてB/Lを手に入れるのか?」、別の言い方をすれば、「輸出者のもっているB/Lはどのようにして輸入者の手に渡るのか?」というしくみを知らなければならない。

STEP4
ここで話を輸出者のほうに戻す。
輸出者は、貨物を船会社に渡して出荷し、船荷証券(B/L)を入手したら、次に輸出代金の回収の手続きに取りかかることになる。
そこで輸出者は、輸出代金の回収の手段として荷為替手形というものを使う。
具体的には、荷為替手形を振り出して輸出地の銀行に持ち込み、その荷為替手形を輸出地の銀行に買い取ってもらうか、あるいは、手形代金に相当する輸出代金を輸入地の銀行を通じて輸入者から取り立ててもらうことにより、輸出代金を回収することになる。
したがって、「荷為替手形を輸出地の銀行に買い取ってもらう」とか「手形代金に相当する輸出代金を輸入地の銀行を通じて輸入者から取り立ててもらう」ということの意味を理解するには、「荷為替手形とは何か」を知る必要がある。
荷為替手形とは、文字どおり「荷」+「為替手形」で構成されているが、この場合に「荷」=「貨物」=「B/L:船荷証券」と考えれば、「荷為替手形」=「船荷証券+為替手形」となる。つまり、荷為替手形とは、「貨物の引換券」の付いた為替手形なのである。
では、為替手形とは何かというと、この場合の為替手形は、輸出者が輸入者あるいは輸入地の銀行に対して、手形代金(輸出代金)を支払うように依頼して振り出す手形であるから、輸出者が銀行を経由して輸入者に送る「輸出代金の請求書」のような手形であると考えればよいであろう。
したがって、「荷為替手形」とは、「貨物の引換券の付いた、輸出代金の請求書のような手形」であると考えられる(図表2参照)。

すでに説明したように、船会社は、輸入地の港まで運んだ貨物を、B/Lと引換えでなければ輸入者に引き渡さないわけであるが、荷為替手形とは「輸入者が手形代金を支払えば、代金の支払いと引換えに、貨物の引換券である船荷証券を輸入者に引き渡します」という意味をもっている手形だというわけである。

STEP5
次に、輸出者が輸出地の銀行に持ち込んだ荷為替手形は、輸入地の銀行に送られる。そして、荷為替手形を受け取った輸入地の銀行は、荷為替手形の到着を輸入者に知らせる。

STEP6
輸入地の銀行から荷為替手形の到着の連絡を受けた輸入者は、荷為替手形に含まれている船荷証券(B/L)がなければ貨物を船会社から引き取ることができない。そこで、銀行に行って手形代金を決済し、代金の決済と引換えに貨物の引換券であるB/Lを手に入れることになる。

STEP7
このようにして船荷証券を手に入れた輸入者は、そのB/Lと引換えに船会社から貨物を引き取ることができる。
もちろん、現実には、輸入者が直接、船会社から貨物を引き取るわけではなく、通関業者に依頼して、輸入通関手続きが完了した貨物を引き取ることになる。

STEP8
それでは、輸入者がB/Lを手に入れるために輸入地の銀行で決済した手形代金はどうなるかというと、輸入地の銀行から輸出地の銀行に送られ、輸出地の銀行から輸出者に支払われることになる。それで、輸出者も無事に輸出代金を回収できることになるわけである。
この荷為替決済の要点をまとめたのが次の図表3である。


著者
井上 洋(井上貿易事務所代表・貿易コンサルタント)