ビジネスわかったランド (営業・販売)

基本と行動マナー

初回訪問・再訪問するときの心得は
 初回訪問は「探り」に重点を置き、相手の記憶がなくならないうちに再訪をかけるのが鉄則。

<< 初回訪問の心得 >>

初回訪問で即決するのが当然とされるような業界は別にして、普通は成約に至るまでに何回か訪問することになる。初回訪問から成約までにどれぐらいかかるかは、実は初回訪問のときに決まるといっても過言ではない。

商品を売るよりもまず会社と自分を売る
よく知りもしない会社の、しかも一度も会ったことのない営業担当者から商品を購入するのは不安である。その点、会社と自分をよく知ってもらえば不安は払拭できる。お客様の不安を取り除ければ、たとえ初回で成約できなくても再訪、再々訪と何度でも訪問できる。これを“会社や自分が売れた”というのである。
ところが、商品だけを売ろうとした場合には、その商品を断わられたら、2度とそのお客様を訪問できなくなってしまう。商品だけを売ることに躍起にならないことが肝要である。

お客様の現状をできるだけ聞き出す
初回訪問の場合は、お客様について知らないことばかりである。会社概要ぐらいはわかるにしても、自分が売ろうとしている商品についてのニーズがあるかどうかは直接聞いて探ってみなければわからない。この“探り”が初回訪問の大きな目的である。お客様のニーズや本音を探るのは非常にむずかしいことではあるが、とにかく「初回訪問の目的は探りにある」ことを強く意識すべきである。

相手から調査されていることを意識する
こちらが相手を探っているのと同様に、お客様もまた営業担当者を調査している。取引するに足る会社か、信用できる営業担当者か、価格に見合う商品か等々。会社の信用については別途調べようがあるが、営業担当者については面談中がすべてである。「見られている」「調査されている」と思えば、初回訪問時の態度や商談の仕方がいかに重要であるかがわかるはずである。

誰が決定権者であるかを見極める
売り込む先が企業や団体である場合、購入の決定権をもつ人に会わなければいつまで経っても話が前へ進まない。備品なら総務部門といっても、金額によって決定権者が課長であったり部長であったりする。初回訪問のとき、面談の相手が主任だったら、誰が決定権者であるかを探らなければならない。主任は己れの見栄や防御のために「自分が決定権者である」かのように言うことがある。これに振り回されることなく、真の決定権者を探すのが初回訪問の探りの課題の1つである。

次回訪問のきっかけをつくる
初回訪問で成約できなくても、また十分な調査ができなくても、再度訪問できる可能性を残せれば問題はない。2度、3度と商談を重ねているうちに成約への突破口が見つかるものである。次回訪問のきっかけは、工夫次第でいくらでもつくり出せるはずだが、一般的なものとしては次のようなものがある。
・帰社してから調べて、報告できる宿題をもらう
・詳しく説明できる者と同行することを約束する
・社内の別の担当者と面談することを承知させる

<< 再訪問の心得 >>

どれくらいの期間をおいて再訪問すべきか。一般的には「2週間以内に」といわれているが、決まりはない。翌日でもよいし、3日後、1週間後でもよい。まさにケース・バイ・ケースであるが、初回訪問と同じ人と面談する場合は、「その人の記憶がなくならないうちに」再訪問すべきである。
再訪問では、ある程度お客様の事情もわかっているし、それなりの本音も見えてくる。成約の可能性はここで見極めなければならない。とくに心がけるべきは、次の点である。

訪問の前にその日の商談の目的を定める
訪問の目的を定めないと、商談の焦点がぼけてしまう。
・さらに深く突っ込んだ探りのためなのか
・商品の詳しい説明のためなのか
・成約を強烈に迫ってクロージングにまでもっていくためなのか
訪問の目的を明確に定めることが大切である。これをやらないと、何を準備していけばよいのかも決まらないし、せっかくの再訪問が無駄足になりかねない。

質問準備を初回以上にきちんとする
訪問の目的が決まれば、何を聞き出さなければならないかが明確になる。どんな質問をすればよいかを一度「紙に書き出してみる」と、関連する新たな質問も浮かんでくるし、効果的な質問の順番もわかってくる。質問の内容と、質問の鋭い角度と数とが商談をリードしていくポイントである。

商談には初回訪問のお礼から入る
あまりにも当然すぎて、ついつい忘れがちだが、単なる儀礼ではなく、「前回の商談内容を確認する」ためにも絶対に必要なことなのである。

前回の商談内容を確認する
ただ単に前回の商談のすべてを確認するのではなく、再訪問の目的に合った部分を浮彫りにさせて、それを確認する。
前回にもらった宿題があれば、それを思い出させることも必要。相手によってはすっかり忘れていることも少なくないので、思い出させることによって、こちらから押し掛けたのではなく、むしろ要請に応じて再訪問したのだと理解させるのである。

「事前の十分な準備」を感じ取らせる
宿題に対する懇切な回答や鋭い質問、よくできた提出資料は、お客様に「私に会うために念入りな準備をしてきたな」と思わせる。“十分な準備”は、こちらの商談にかける期待や意気込みを感じさせるものである。それはそのまま、お客様の商談に取り組む姿勢を真剣なものにする。準備はただすればいいというものではなく、お客様に“感じ取らせる”ことが大切なのである。

「話し甲斐のある奴だ」という評価を勝ち取る
再訪問で「もう購入しないという結論が出たのだから、二度とくるな」ということになってしまったら、こちらの負けである。再訪問で成約できなくても、次回訪問のチャンスさえ残せれば、いつかは成約に持ち込める。そのためには、「あの男は話し甲斐のある奴だ」という評価を勝ち取る必要がある。これができれば、その後も遠慮なく訪問できる。たとえ商品は買わなくても、出入りする営業担当者から「多くの情報が得られるなら会いたい」というのが、お客様の偽らざる気持ちなのである。訪問を待たれる関係さえつくりあげておけば、成約のチャンスはいくらでもある。

著者
窪田 通(タイアップシステム研究会)