ビジネスわかったランド (営業・販売)

販売促進

安物イメージのないバーゲンの打ち方は
 安さの理由を明瞭に打ち出すとともに、「優待」のキャッチフレーズで安物イメージを払拭する。

消費者に優越感を与える
少々理屈っぽくなるが、本題に入る前に、“安物”と“安い物”との差をはっきりさせておきたい。
“安物”とは値打ちのない物、つまり価格も低く品質も標準以下の、いわゆる「安物買いの銭失い」ということわざがそのまま当てはまる商品のことをいう。
一方、“安い物”とは、本来はもっと高価であってしかるべきだが、何らかの理由で販売側が価格を引き下げた商品のことである。そしてバーゲンでは、この“安い物”をいかに上手に売るかということが問題になる。
豊かになり、目の肥えた消費者は、もはや“安物”には見向きもしない。したがって、上手なバーゲンとは、消費者にいかに“安物イメージ”を与えないで売るかということになる。
本題に戻って説明すると、安物に見えないバーゲンとは消費者に優越感を与えることであるといえる。その商品をバーゲンで買うことによって、「よい買い物をした」「トクをした」「私は買い物上手だ」と思わせるようにもっていくのである。逆に劣等感を与えれば、どんなよい商品でも“安物”となる。

安さの理由を明らかにする
さらに詳しく心理学上の分析を行なうと、商品の価値は購入者の欲望の充足度、つまり満足度によって決定されるもので、価格や値引率はその満足度を極大にするための一種のPOPに過ぎないといえる。
極論と思われるかもしれないが、実際にそうあるべきもので、それをはっきり認識している企業は意図的に消費者の満足度を高める工夫を行なっている。
また、認識していない企業でも、「この値段なら消費者も納得して買うだろう」という漠然とした意識のなかで上代や値引率を決定しているはずである。
実際、上代は、このように決定されるのが正しい方法であり、原価から積み上げると消費者の意識から乖離し、売れない商品となってしまう。
これは、バーゲンでも同じで、安ければ安いほどよいというものではない。バーゲンにも消費者の満足度を充足し、販売側にもそれなりの利益が得られるという“適正価格”がある。あまりに安すぎると商品そのものに対する疑念が起こったり、はなはだしいときには価値がなくなることさえある。
消費者が求めているのは、リーズナブル(合理性がある)ということである。
バーゲン売場でも「少々難あり」「キズ物」「半端物」という表示に消費者が興味をもつ。値引の原因がはっきりしているから、その難点以外は大丈夫という信頼感が生まれるのである。
逆に、一見どこといってキズのない商品なのに、なぜこれだけ値引するのだろうという疑念が起こると、考えれば考えるほど不安が募り、買わなくなるのである。
商品として売る以上は、使用に堪えないキズ物であるはずはないので、難点をはっきり示すことは商品と店の信用を保つために必要である。
近年、商品のライフサイクルが短くなっているので、とくにファッション商品などは1シーズンだけの勝負となることが少なくない。そのような商品は、シーズン・オフ近くになると50%から70%というような大幅値引のバーゲンも行なわれる。
流行商品は、在庫として抱えるより売り切ったほうがトクなのだという販売側の事情を知っているお客にとっては、こうした大幅値引商品は値打ち物となるが、大部分のお客は前述のような不安を抱くものである。
そこで、いっそ販売店側の事情をあからさまにしてみるという方法がある。
「気候状況が読み切れず、見込み違いで大量仕入をしていまいました。どうしてもいま在庫処分したいのです」などということを、懇意な客に知らせるのである。自店の恥をさらすことになるが、お客からは逆に正直な店という評価を得られる面もある。
ともかくバーゲンといえども、お客に理由も知らせず大幅値引をして販売するのは得策とはいえない。一度これをやるとお客に対し、「来シーズンもこのような叩き売りをするだろう」という期待を抱かせることになり、店の格を損なうことにつながるからである。

「優待」の一言が安物イメージを消す
次に、上手なバーゲンを行なうためのヒントをいくつかまとめると、次の表のようになる。


著者
和田 浩(経営コンサルタント)
2004年11月末現在の法令等に基づいています。