ビジネスわかったランド (人事・労務)

非正規雇用者の採用・雇用・退職等

派遣社員を受け入れる際の注意点

(1)労働者派遣の禁止・制限業務

●港湾運送業務・建設業務・警備業務

あくまで禁止されているのは業務であって、業種ではない。たとえば、建設会社に派遣される場合であっても、実際の業務が事務や営業であれば派遣就業は可能である。

●医療関係業務(医師・歯科医師・薬剤師等)

●弁護士や司法書士等の一定の資格業、派遣先における団体交渉や労使協議の業務

(2)派遣社員の事前面接の禁止

誰を派遣するかを決めるのは「派遣元」であって、「派遣先」ではない。そのため、派遣元が派遣社員を決定する前に、派遣先が履歴書を送付させたり、面接をしたりすることは禁止されている。

(3)「個別契約書」の締結

派遣元と派遣契約を結ぶにあたっては、「基本契約」と「個別契約」の2段階を経るケースが多い。

基本契約は、法律で義務づけられているものではないが、派遣契約の大枠として締結される。個別契約については、労働者派遣法により記載事項が定められている。

この時点で、派遣社員の氏名等を明記することはできないが、就業場所や派遣期間、就業時間等の条件は締結しなければならない。

(4)派遣先責任者・指揮命令者の選任

派遣社員を含めて使用する労働者が5人を超える事業所は、「派遣先責任者」を選任する必要がある。

派遣先責任者は、人事や総務部門の責任者が担当することが多く、派遣受入期間の通知や苦情処理を含めて、派遣元責任者との連絡・調整を行なう。

一方、「指揮命令者」とは、直接、派遣社員に対して業務の指揮命令を行なう者をいう。一般的には、その業務を統括する者が担当する。

(5)派遣先管理台帳の備え付け

派遣先は派遣先管理台帳を備え付け、派遣社員が派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻、休憩時間などを記録しなければならない。

(6)派遣契約の中途解除が行なわれる場合

派遣先の都合により派遣契約を中途解除する場合には、派遣社員の雇用の安定を図るために「新たな就業機会の確保」や「派遣元に補償義務のある休業手当の費用負担」等の必要な措置を講じることが派遣先に義務づけられている。

(7)労働契約申込みみなし制度

指定業務とは関係のない業務を行なわせたり、受入可能期間を超えて派遣を受け入れるなど労働者派遣法に抵触した場合は、派遣先から派遣労働者に対して労働契約締結の申込みがなされたとみなす「労働契約申込みみなし制度」がある。派遣先は十分に注意が必要である。

(8)派遣労働者の同一労働同一賃金

2020年4月1日から施行されている改正派遣法では、派遣元に対して、①派遣先均等・均衡方式、②労使協定方式のいずれかの採用を義務付けている。派遣先としても、福利厚生や教育訓練の情報提供などを求められる場合があることに注意が必要です。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。