ビジネスわかったランド (人事・労務)

非正規雇用者の採用・雇用・退職等

最低賃金法の基礎知識
非正規雇用者のうち、アルバイト・パート社員の賃金は「時給」で設定することが多い。この場合、会社は最低賃金法に違反しないよう注意する必要がある。

(1)最低賃金法とは

最低賃金法とは、労働者に支払う賃金の最低限度額を定め、その最低賃金額以上の賃金を支払うことを使用者に義務づけた法律である。

最低賃金額は時給単価で設定されている。また、産業や職種にかかわらず都道府県別に設定される「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに設定される「産業別最低賃金」の2種類で構成され、いずれか高いほうが適用される。

たとえば、地域別最低賃金が1,000円で、製鉄業の産業別最低賃金が1,050円という場合、製鉄業に従事するパート社員等を雇い入れる際には、高いほうの最低賃金額、つまり産業別最低賃金の1,050円が適用される。

(2)常に最新の最低賃金額を把握しておく

最低賃金額は改定されることがあるため、知らない間に最低賃金額を下回る時給単価で賃金を支払っているという事態も生じ得る。

したがって、常に最新の最低賃金額を把握し、非正規雇用者の時給単価が最低賃金額を下回らないよう注意する必要がある。最新の最低賃金額は、厚生労働省のホームページや労働基準監督署のポスター等により確認できる。

(3)最低賃金法に違反した場合

会社が最低賃金法に違反している場合は、最低賃金額に達していない不足額を支払わなくてはならない。

非正規雇用者の側から「時給はいくらでもよいので雇ってください」と頼まれ、最低賃金額を下回る時給単価を設定していた場合であっても、諸事情を問わず、最低賃金法が適用されることに注意が必要である。

また、最低賃金法に違反した場合には会社側に罰則がある。地域別最低賃金に違反した場合は50万円以下(最低賃金法第40条)、産業別最低賃金に違反した場合は30万円以下(労働基準法第120条)の罰金に処せられる。

(4)最低賃金の周知義務

会社は、最低賃金額を事業場に掲示等して、労働者に周知する義務がある。具体的には、以下の事項を事業所内での掲示等により周知する。
●最低賃金の適用を受ける労働者の範囲
●労働者に適用される最低賃金額
●算入しない賃金
●効力発生年月日
周知義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられる(最低賃金法第41条)。この周知義務は忘れられがちだが、労働基準監督署の調査の際に指摘される点でもあるため注意したい。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。