ビジネスわかったランド (人事・労務)

高年齢者の継続雇用制度

定年退職後の雇用契約

(1)正社員の定年退職後の雇用延長

高年齢者雇用安定法により、会社は、従業員が60歳に達した後も雇用の継続が義務づけられている。

雇用を継続する場合の選択肢は3つあるが、多くの会社は「定年退職後の継続再雇用制度」を導入している。これは、いったん退職した後に再雇用するものである。

なお、定年退職後、継続再雇用される従業員を「嘱託社員」と呼ぶことがあるが、嘱託社員という名称に法的根拠はないため、どのように呼ぶかは会社の自由である。ここでは、嘱託社員と呼ぶこととする。

(2)嘱託社員活用のメリット

昨今の人手不足の深刻化、特に熟練した技術と経験をもつ人材が、次々と定年退職してしまう状況を考えると、嘱託社員を有効に活用することは、円滑な事業活動のうえでも不可欠といえるだろう。

いったん退職した従業員を新たに再雇用する場合は、必ずしも定年前と同じ労働条件(賃金等)で雇用する必要はないが、仕事と生活のバランスに配慮して労働条件を設定することが望まれる。

なお、再雇用時に賃金を引き下げた場合、その嘱託社員は「高年齢雇用継続給付」を受給できる可能性がある。受給できる場合は、迅速に受給の手続きを行なう必要がある。
※2025年4月1日から高年齢雇用継続給付の給付率が変更される予定である。

(3)嘱託社員の想いは十人十色

定年退職後に継続再雇用を希望する従業員にはさまざまな要望がある。たとえば、次のような要望である。
  1. いままでどおりの責任や業務の難易度等で働き続けたい
  2. 責任や業務の難易度等を軽減して働き続けたい
  3. 働く時間を減らして、趣味に時間を費やしたい
  4. 体調が悪いので、自身の健康状態と相談しながら働きたい
したがって、継続再雇用する嘱託社員の勤務形態については、「フルタイム勤務のみ」とするのではなく、いくつかの選択肢を用意しておくことが望ましい。

なお、定年退職後の継続再雇用では、賃金の増減ということ以外にも、勤務形態によっては次のような問題(不利益)が生じる可能性がある。
  1. 健康保険等の被保険者資格を喪失することがある
  2. 年次有給休暇の付与日数に差が出ることがある
定年退職後の継続再雇用を実施する際には、以上のような点にも配慮して、嘱託社員の就労意欲を引き続き高めるシステムづくりを心がけるようにしたい。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。