ビジネスわかったランド (人事・労務)

高年齢者の継続雇用制度

高年齢者雇用確保措置
会社は、その雇用する従業員が定年年齢を迎えた場合、本人が希望すれば65歳までの雇用確保を義務づけられているが、これは定年年齢の65歳までの延長ではなく、65歳までの雇用確保措置である。

ここでは、その雇用確保措置について説明する。

(1)雇用確保措置は3つの方法から選択

65歳までの雇用を確保する方法は、次の3つからいずれかひとつを選択する。
  1. 65歳への定年年齢の引上げ
  2. 65歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年の定めの廃止
2の継続雇用制度は、さらに「継続再雇用制度」と「勤務延長制度」の2つに分類される。

「継続再雇用制度」とは、定年に達した時点でいったん退職させ、雇用契約を結び直して再雇用する方法である。

「勤務延長制度」とは、定年後も退職することなく、雇用契約を継続させる方法である。定年前の雇用・労働条件が維持される場合もあれば、変更される場合もある。

この2つの制度の最大の違いは、“雇用契約を結び直すか、結び直さないか”という点にあり、実務上は多くの会社で継続再雇用制度が採用されている。

なお、「1.65歳への定年年齢の引上げ」は人件費の負担増の問題が、「3.定年の定めの廃止」は解雇リスクの問題が生じるため、採用率はあまり高くはない。

(2)雇用確保措置の内容面の留意点

会社としては、65歳までの雇用確保を重荷や負担と捉えるのではなく、高年齢者が働きやすい職場環境の整備や魅力のある制度づくりのきっかけとしたい。

実際には定年前と業務内容を変えずに労働時間や労働日数を短縮したり、単純な補助作業に就かせるケースもあると思われるが、できるだけ役割やポジションを明確にして、高年齢者の就業意欲の向上を図る必要がある。

若手社員のアドバイザーとしての役割や技能伝承等、経験豊富な高年齢者にしかできない仕事は少なくない。高年齢者が長年培ってきた知識やノウハウは、うまく活用すれば業績の向上や組織の活性化にもつながるだろう。

高年齢者雇用安定法の遵守は当然として、仕事の内容や高年齢者のモチベーションにも目を向けて、雇用確保措置を設計・運用するようにしたい。

(3)70歳までの就業機会の確保(努力義務)

2021年4月1日より、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高齢者就業確保措置(70歳までの定年引き上げ等)を講ずる努力義務が新設されている。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。