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雇用保険・社会保険の知識と手続き

健康保険・厚生年金保険の随時改定手続き
ここでは、健康保険・厚生年金保険の「標準報酬月額」を改定する重要な手続きである「随時改定」について説明する。

(1)随時改定とは

基本給や役職手当等の固定的な賃金が変動し、標準報酬月額が2等級以上変わった場合は、定時決定を待たずに標準報酬月額の改定をしなければならない。これを「随時改定」という。

実際に支払われている報酬と標準報酬月額が大きく異なると、実態に即した社会保険料の徴収や手当金等の保険給付ができない。随時改定は、その乖離を是正するために行なわれる。

随時改定が必要な事由が生じたら、直ちに年金事務所等に「被保険者報酬月額変更届」を提出しなければならない。

(2)随時改定の対象となる人

昇給や降給などにより固定的賃金が変動した場合に、標準報酬月額の随時改定が行なわれる。

具体的には、次の3つの要件をすべて満たした場合に随時改定が必要になる。
  1. 昇給や降給によって、基本給等の固定的賃金が変わった
  2. 変動月を含め3か月間に支払われた報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、従来の標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じた
  3. その3か月間とも、報酬の支払基礎日数が17日以上ある
随時改定は、固定的賃金が変動したときに行なわれる。残業で一時的に時間外手当が増加した場合などは対象外である。

非正規雇用者の場合は、月によって労働時間が変動する人が多いため、時給等の単価は上がっているか、月に17日以上出勤しているか、といったことを把握・確認のうえで判断する。
注意点!
固定給の変動には、通勤手当の増減も含まれる。たとえば、通勤手当が100円しか上がらなくても、残業代が増加して、3か月間に支払われた報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、従来の標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じたときは、随時改定となる。

また、当然のことだが、時給制の時給単価、日給制の日給単価が上がった場合にも固定給の変動となる。

(3)60歳以降で契約変更により報酬が大幅に下がる場合

定年に達した正社員が、1日の空白もなく同じ事業所で嘱託社員として再雇用される場合は、報酬額が大幅に減少するのが一般的である。

報酬額が大幅に変動した場合、通常の随時改定では、4か月目から標準報酬月額が改定される。その間は、報酬額が大幅に減ったにもかかわらず、被保険者、会社の双方とも従前の保険料を負担しなければならない。

そこで、特例として「同日喪失・同日取得」が認められている。この特例手続きにより、すぐに定年退職後の給与額に基づく新たな標準報酬月額となり、保険料の負担が軽減される。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。