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労災と労災保険

療養(補償)給付の手続きと注意点-1
ここでは、労災保険の給付の中でも最もポピュラーな「療養(補償)給付」について、利用する際の手続きと注意点を解説する。なお、業務災害の場合は「療養補償給付」、通勤災害の場合は「療養給付」という名称になる。

(1)労災指定医療機関の場合

労災保険を利用する際には、労災指定医療機関に対し、様式第5号「療養補償給付たる療養の給付請求書」を提出すれば、給付(治療)のための手続きは終了する。

業務上での災害というと、会社内でのケガがまず想定される。

業務上のケガで治療を受ける場合に注意しなければならないのが、受診先が「労災指定医療機関」であるかという点である。労災指定医療機関とは、都道府県労働局長が医療機関等の申請に基づき指定したもので、労災事故による治療を現物給付として行なう。

たとえば、従業員が私傷病(インフルエンザなど)で病院を受診する場合は健康保険証を提示するが、これと同じように、労災保険では様式第5号を労災指定医療機関に提出する。

健康保険証は提示後に本人に返却されるが、この様式第5号は、労災指定医療機関を経由して労働基準監督署に渡っていく。この点の違いはあるが、治療を受けるときに病院に提出するという点では、健康保険証と同じ要領で考えれば対処しやすいだろう。

また、薬局で薬剤の支給を受ける場合には、医療機関とは別に、薬局に対しても様式第5号を提出する。したがって、病院で治療を受け、薬局から薬剤の支給を受ける場合には、都合2枚の療養の給付請求書が必要になる。

なお、通勤災害で同じ療養の給付を受けるためには、様式第16号の3「療養給付たる療養の給付請求書」を利用する。

(2)労災指定医療機関ではない場合

緊急時や近隣に労災指定医療機関がない場合には、受診先が労災指定医療機関ではないこともある。

労災指定医療機関であれば様式第5号を提出すれば済むが、労災指定医療機関ではない場合は、様式第7号(1)「療養補償給付たる療養の費用請求書」を利用する。

労災指定を受けていない医療機関の場合、治療を現物給付として行なうことはできない。いったん従業員が治療費を立替払いし、その立替払いした額を、後日、労働基準監督署に請求するときに利用するのが、様式第7号(1)である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。