ビジネスわかったランド (人事・労務)

労災と労災保険

労災保険の給付の種類と関連の手続き
従業員は、仕事中や通勤途上でケガをした場合に、労災保険により医療費等の給付を受けることができる。ここでは、労災保険の給付の種類と関連する手続きについて解説する。

(1)労災保険の給付の種類

労災保険は、療養(補償)給付から遺族(補償)給付まで、その目的に応じてさまざまな給付を用意している(補償とは、業務上の災害に対する補償を意味する)。
・療養(補償)給付 … 療養(治療)するとき
・休業(補償)給付 … 連続して4日以上の休業となるとき
・傷病(補償)年金 … 療養開始から1年6か月経過後、傷病等級に該当するとき
・障害(補償)給付 … 傷病が治癒し、障害等級に該当するとき
・介護(補償)給付 … 傷病(補償)年金や障害(補償)年金の受給者で、一定の介護を受けているとき
・遺族(補償)給付 … 従業員が死亡したとき
・葬祭料(葬祭給付) … 従業員が死亡したとき
これらの給付のうち、利用する機会が比較的多いものは、「療養(補償)給付」と「休業(補償)給付」である。

他の給付は、死亡に関する給付をはじめ、被災状況が特に重い場合や職場復帰が困難なケースが想定される。労災保険の給付としての種類は多いが、どちらかといえば、例外的な保険給付という位置づけになる。

労災保険に関する処理を円滑に行なうためには、会社が従業員に適切な指示や指導をするなど、積極的なサポートが大切である。

(2)労災保険の給付申請に関連する手続き

実務担当者としては、従業員の労災保険の給付を申請する手続きがメインとなるが、そのほか「治療中の病院の変更」についても手続きが必要となることに注意したい。

よくあるケースとして、会社近くの労災指定病院で治療中の従業員が、自宅近くの病院への転院を希望することがある。

こうした転院は自由に行なうことができる。その際の手続きとしては、最初に受診した病院と転院先の双方が労災指定医療機関である場合は、様式第6号「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」を転院先に提出する必要がある。

転院先が労災指定医療機関でない場合には、様式第7号「療養補償給付たる療養の費用請求書」を会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出して治療を継続する。

通勤災害も同じ考え方で、労災指定医療機関の変更は様式第16号の4、労災指定医療機関以外への変更は様式第16号の5を利用する。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。