ビジネスわかったランド (人事・労務)

安全配慮義務・安全衛生管理

安全衛生教育の実施等
労働安全衛生法では、第59条から第60条の2にわたり、従業員に対して安全衛生教育を行なうべき義務を会社に課している。ここでは、安全衛生教育と衛生管理者の資格について解説する。

(1)安全衛生教育の目的と内容

たとえば、機械や器具などを利用する場合、十分なメンテナンスをしていたとしても、利用する者が必要な教育や指導を受けていなければ、労災事故が発生する可能性が十分に考えられる。

安全衛生教育も、安全衛生管理と同じく、従業員数や業種を問わない。

なお、雇入時や作業内容変更時の安全衛生教育は、次のように定められている(労働安全衛生規則第35条)。
1.機械等、原材料等の危険性または有害性とこれらの取扱方法に関すること
2.安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能とこれらの取扱方法に関すること
3.作業手順に関すること
4.作業開始時の点検に関すること
5.当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因と予防に関すること
6.整理、整頓、清潔の保持に関すること
7.事故時等における応急措置と退避に関すること
8.1~7のほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項
事務系の職種の場合、上記の1~4は省略できるが、次のような安全衛生教育は、職種等に関係なく実施しておくべきだろう。

・社有車等をはじめ自動車を利用する際の安全教育
・防犯対策等のセキュリティに関する安全教育
・新型インフルエンザ等感染症予防についての衛生教育

労働安全衛生にはさまざまな基準があり、ハードルが高いと感じるかもしれないが、労働安全衛生法はあくまで「最低基準」を定めている。

実務上は、会社や業務の実態等に応じて柔軟に対応していくことが望ましい。

(2)衛生管理者免許の種類

衛生管理者免許には、第1種衛生管理者免許と第2種衛生管理者免許がある。

第1種衛生管理者免許を取得していれば、すべての業種で衛生管理者になることができる。一方、第2種衛生管理者免許の場合、建設業や製造業、運送業等の13業種に関しては、衛生管理者になることができない。

衛生管理者の資格要件は、「建設業や製造業、運送業等の13業種」と「その他の業種」の2つに分けて考える必要がある。

13業種の衛生管理者は、第1種衛生管理者免許取得者をはじめ、衛生工学衛生管理者免許取得者、医師や歯科医師、労働衛生コンサルタント等が対象となる。

一方、その他の業種では、第2種衛生管理者免許者も対象となる。

そのため、同じ会社であっても、事業場によって業種が異なる場合には、それぞれ対象となる衛生管理者を選任する必要がある。

たとえば、本社(その他の業種)では第2種衛生管理者免許取得者を、製造工場(製造業)では第1種衛生管理者免許取得者を、それぞれ衛生管理者として選任しなければならない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。