ビジネスわかったランド (人事・労務)

安全配慮義務・安全衛生管理

安全衛生管理体制-業種と基本体制
労働安全衛生法により課される義務は、事業場の従業員数とともに、業種によっても異なる。ここでは、業種の考え方と基本的な安全管理体制について解説する。

(1)事業場の業種

事業場の業種は、会社全体ではなく、個々の事業場単位で判断される。

たとえば、大手メーカーの場合、本社機能と生産拠点を別とし、そのうえで各地に支社や営業所を置くのが一般的な組織形態となる。このとき、会社全体としては製造業になるが、安全衛生管理体制では、事業場単位で業種(※)を区別する。
※製造業、建設業、運送業、鉱業、各種商品卸売業、その他の業種 など

従業員数120人のメーカーの例で考えると、次のようになる。
●本社(40人) その他の業種 → 1.衛生推進者の選任義務
 
●工場(80人) 製造業 → 1.安全管理者の選任義務
2.衛生管理者の選任義務
3.産業医の選任義務
4.安全衛生委員会の設置義務

(2)基本となる安全衛生管理体制

労働災害の発生率や職場の作業環境は、会社の業種や規模により大きく変わる。

そのため、ひとくちに安全衛生管理体制といっても、すべての会社に一律のものが適用されるわけではない。下記は、「その他の業種」における安全衛生管理体制である。
従業員数10人~49人の事業場 衛生推進者
従業員数50人以上の事業場 1.衛生管理者
2.産業医
3.衛生委員会
ここでは、その他の業種のケースを取り上げたが、建設業、運送業等のいずれの業種においても、定期的に委員会で話し合うことで、労働災害の防止や職場環境の整備に取り組んでいくというスタイルは変わらない。

ポイントとなるのは、委員会を中心とした安全衛生に対する取り組み方である。確かに、衛生管理者や産業医等の選任義務を果たすことは重要だが、会社の一方的な安全衛生管理で終わらせるのではなく、委員会での話合いを通じて、いかに職場(従業員)に反映させていくかということが最も大切になる。

労働安全衛生法では、安全委員会や衛生委員会を月に1回以上開催することを義務づけている。前もって年間のスケジュールを立て、実施時期と審議事項をあらかじめ社内にアナウンスしておくことで、計画的な実行と内容のある話合いが期待できるだろう。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。