ビジネスわかったランド (人事・労務)

安全配慮義務・安全衛生管理

安全衛生管理体制-事業場の考え方
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境をつくることを目的とする法律である。この法律に基づき、会社は安全と衛生を確保するために、安全衛生管理体制を構築しなければならない。

安全衛生管理体制の構築にあたって、労働安全衛生法では、事業場の人数や業種に基づき、履行すべき義務を定めている。

労働安全衛生法により課される義務は、「従業員数が50人以上」がひとつの目安で、衛生管理者や産業医、業種によっては安全管理者の選任義務も発生する。

そのため、労働安全衛生法の義務を遵守するためには、まず「事業場の定義」を正しく理解する必要がある。

この場合の事業場は、会社全体ではなく、支店・営業所等ごとに、ひとつの事業場として取り扱われる。
東京本社(60人)
大阪支社(30人)
それぞれが別個の「事業場」として扱われる
たとえば、各種商品小売業で会社全体の従業員数が50人の場合、本店のみで50人であれば、1.産業医の選任、2.安全管理者の選任、3.衛生管理者の選任、4.衛生委員会の設置と、最低4つの義務が課される。

一方、本店が30人、2つの支店が10人ずつであれば、課される義務はそれぞれ安全衛生推進者の選任のみとなる。

ただし、次の2種類の例外がある。
  1. 出張所等で規模が小さく、組織化もされていないような場合には、独立性がないものとして、直近上位の事業場に一括される ※営業所長等の明確な管理者を置かず、一般従業員が2、3人であれば、間違いなく直近上位の事業場に一括される
  2. 同じ場所にあったとしても、著しく労働の態様が異なる場合には、独立性があるものとして、別の事業場として扱われる ※同一の会社で、所在地も同じであったとしても、働き方があまりにも異なる場合には、別の事業場として区分したほうが労働安全衛生法をより適切に運用することができる、という考え方に基づく
なお、事業場は「場所単位」が原則だが、この場所とは、建物自体ではなく敷地を指す。同一敷地内にあれば、複数の建物があっても、原則として同じ事業場とみなされる。

たとえば、同じ敷地内に工場が複数ある場合、すべてがひとつの事業場として取り扱われる。また、工場やプラントには通常、管理事務所が併設されているが、工場との組織的関連性が高いことから、工場等と同一の事業場とみなされる。
注意点!
従業員数には、直接雇用している労働者はもちろん、他社から出向している者や、派遣会社から派遣されてきている派遣社員も含める必要があることに注意が必要である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。