ビジネスわかったランド (人事・労務)

安全配慮義務・安全衛生管理

休職者・深夜業従事者への措置・配慮等
ここでは、休職者と深夜業従事者への安全配慮義務について解説する。

(1)休職者の復職と安全配慮義務

社内に、うつ病により長期にわたって休職している従業員がいて、間もなく休職期間が満了するという場合、会社はどのように対応すればよいだろうか。

まず、就業規則上に「休職期間満了後、復職できない場合は退職とする」といった自動退職に関する定めがあり、例外なくその規定どおりに運用されているのであれば、休職期間の満了をもって退職とすることに問題はない。

ただし、本人が職場復帰を希望している場合には注意が必要となる。

いくら本人が復職を希望していても、休職期間満了時に労務を提供できる状態になければ、当然、会社としては復職を拒否せざるを得ない。しかし一方で、復職希望を拒否するということは、不利益な取扱いをすることになる。

復職を拒否したことをめぐってトラブルが生じ、訴訟等に発展した場合のリスクに備える意味でも、本人の病状報告や主治医の診断書に加えて、産業医に意見を求めるなど、復職できないことの「証拠」をできるだけ多く確保しておくことが大切である。

また、うつ病等の精神疾患は再発することも多く、本人の復帰希望を受け入れても、すぐに再休職という事態も考えられる。この場合は、休職回数の制限規定(「休職期間満了後1か月以内に開始した休職については通算する」など)を設けたり、仕事に慣れるまで短時間勤務で様子をみることなどが効果的な対策となる。

(2)深夜業従事者の自発的健康診断

労働安全衛生法第66条の2では、午後10時から午前5時までの業務(以下、「深夜業」という)に従事する従業員は、自ら受けた健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出できる旨を定めている。

これが深夜業従事者の自発的健康診断である。診断結果の提出を受けた事業者は、必要な事後措置等を講じる必要がある。

深夜業従事者の自発的健康診断を受診できるのは、常時使用される従業員で、6か月間における深夜業の1か月当たりの平均回数が4回以上ある者である(労働安全衛生規則第50条の2)。

深夜業従事者とは、シフト勤務制で、深夜シフトの者だけをいうわけではない。勤務時間の一部が午後10時以降に含まれれば深夜業に従事したことになるので、残業等により午後10時以降に労働した従業員も含まれる。

なお、深夜シフト勤務は労働安全衛生規則第45条に定める特定業務に含まれるので、会社には特定業務従事者の健康診断を受診させる義務が生じる。

仮に、午後10時以降の深夜残業が恒常的に行なわれているのであれば、深夜シフト勤務ではない場合も、安全配慮義務の観点から、特定業務従事者の健康診断を実施するのが望ましいだろう。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。