ビジネスわかったランド (人事・労務)

安全配慮義務・安全衛生管理

長時間労働に関する安全配慮
長時間労働の問題は、従業員に対する安全配慮のうちでも最も重要なもののひとつである。会社の業種や規模によって、具体的な安全配慮義務は異なるが、長時間労働はどの会社にも共通する問題といえる。

(1)長時間労働と労働災害の関係

統計上、労災事故として認定された過労自殺の原因のうち、最も多いものは長時間労働というデータも出ている。

さらに、医学的見地からも、過労による健康障害のリスクは、1か月の時間外・休日労働時間が45時間を超えると高まり始める。そして、100時間を超える場合(または過去6か月以内の平均が80時間を超える場合)には、非常に高くなるという見解が出されている。

(2)医師による面接指導制度

労働安全衛生法は、長時間労働の問題を重視して、長時間労働者への「医師による面接指導制度」を設けている。

この制度は、労働安全衛生法第66条の8、第66条の9を根拠とし、従業員数を問わず、すべての事業場が対象となっている。

医師による面接指導が行なわれるのは、1か月当たりの時間外・休日労働時間数(法定休日労働を除く)が一定の基準を超えた場合である。

具体的には、1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行ない、疲労の蓄積が認められるときに、本人の申出により医師による面接指導が実施される。

会社は、その面接指導結果に応じて、必要な対策を実施することになる。
注意点!
メンタルヘルスという個人的な問題に関わるため、本人の申出を原則としている点に注意が必要である。労働安全衛生法第105条により、面接指導結果等の個人情報を他に漏らしてはならないことになっている。
なお、2019年4月1日以降、(1)新技術・新商品等の研究開発業務従事者、(2)高度プロフェッショナル制度の対象労働者については、一定時間を超えた場合の面接指導が義務化されている。

(3)三六協定と長時間労働

時間外・休日労働に関する協定(三六協定)を届け出た場合、内容次第では、労働基準監督署から、仕事と生活の調和に向けた「自主点検結果報告書」の提出を要請されることがある。労働基準監督署は、三六協定の時間数に基づき指導を行なうことがあるので、その指導に基づき長時間労働の減少に努めることも必要となる。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。