ビジネスわかったランド (人事・労務)

育児・介護に関する制度

育児介護休業の実効性を確保する措置
育児介護休業法では、法の実効性を確保するための措置が定められている。ここでは、そのいくつかについて解説する。

(1)苦情の自主的解決制度

会社は、育児介護休業法に関する事項に関し、従業員から苦情の申出を受けた場合は、自主的な解決を図るように努めなければならないとされている。

自主的な解決を図る方法としては、労使で構成される苦情処理機関を設けたり、人事労務担当者が直接相談に対応することなどが想定される。

(2)紛争解決の援助と調停

次のとおり、育児介護休業法に基づく紛争解決の仕組みが整備されている。

●都道府県労働局長による紛争解決の援助

育児介護休業法に関する紛争について、従業員、会社の双方またはその一方から、その解決について援助を求められた場合には、都道府県労働局長が助言、指導、勧告を行なうことができる。

●調停制度

育児介護休業法に関する紛争について、従業員、会社の双方またはその一方から、調停の申請があった場合には、都道府県労働局長が「両立支援調停会議」(第三者機関)に調停を行なわせることができる。

(3)企業名の公表制度と過料

育児介護休業法に違反している会社に対し、厚生労働大臣が是正の勧告をしたにもかかわらず、その勧告に従わなかったときは、企業名を公表できる仕組みがある。

また、育児介護休業法の施行に関して報告を求められたにもかかわらず、必要な報告をせず、または虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処せられる。

(4)不利益取扱いの禁止

従業員の妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いは禁止されている。

なお、これに加えて、平成29年1月1日以降は、上司・同僚からの妊娠・出産、育児・介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パタハラ※)を防止する措置を講じることが会社に義務づけられている。
※マタハラ
マタニティー・ハラスメントの略。女性が妊娠・出産・育児等を理由に嫌がらせや不当な扱い(退職強要など)を受けること
※パタハラ
パタニティ・ハラスメントの略。「男性社員とは」「父親とは」こうあるべき、という固定概念によって、育児休業を妨げたり嫌がらせをしたりする行為。 マタハラの父親版。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。