ビジネスわかったランド (人事・労務)

育児・介護に関する制度

母性保護と会社の対応
女性の社会進出が進み、妊娠中や出産後も働く女性労働者は増えている。そこで会社としては、母性を尊重し、働きながら子供を産み、育てられる環境を整備することが大切である。ここでは、母性保護と会社の対応について解説する。

(1)妊産婦のための保健指導・健康診査

女性は妊娠すると、母体や胎児の健康のために、医師等による保健指導や健康診査を受ける必要がある。女性労働者が仕事のために受診する時間を確保できないといったことがないように、事業主には、その受診のために必要な時間の確保が義務づけられている。

女性労働者から申出があった場合は、健康診査等に要する時間や病院での待ち時間、病院までの往復時間等を考慮して、十分な時間が確保できるようにする必要がある。

(2)健康診査等を受けるために必要な回数の確保

女性労働者から健康診査等の受診の申出があった場合は、事業主は原則として、次の回数を確保しなければならない。
●妊娠23週までは4週間に1回
●妊娠24週から35週までは2週間に1回
●妊娠36週から出産までは1週間に1回

(3)産前産後休業をさせる義務

労働基準法では、事業主は、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者が請求した場合と、産後8週間を経過していない女性労働者については、労働させてはならないと規定している。

しかし、産後休業の場合は、出産後6週間を経過して、医師が就業に支障がないと認め、本人にも働く意思があれば、就業することはできる。

ちなみに、この産前産後休業期間は、健康保険から出産手当金の支給を受けられるので、無給とされるのが一般的である。

(4)育児時間の付与

事業主は、生後1歳に満たない子供を養育している女性労働者から請求された場合は、1日に2回、各30分以上の育児時間を与えなければならない。この育児時間は、1歳未満の子供の世話をする時間であるとともに、産後1年を経過していない女性労働者に対し、一般の休憩時間とは別に、仕事から離れる余裕をもたせる意味での休憩時間である。

また、この規定は1日8時間の勤務を想定しているので、パート従業員などで1日4時間しか勤務しない場合は、1回で足りると解釈されている。

ちなみに、この育児時間中の給与は有給、無給のどちらでも問題はない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。