ビジネスわかったランド (人事・労務)

退職

会社都合で退職する場合の扱い
退職には、一身上の都合によるもの以外に、会社都合によるものがある。ここでは、会社都合による退職と実務上の留意点について解説する。

(1)会社都合で退職するケース

会社都合での退職は、会社からの一方的な契約解除である解雇だけではない。

双方合意による退職にも会社都合のものがあり、具体的には次の2つが該当する。
  1. 退職勧奨

    会社が、個別の従業員に対して、退職を勧める(勧奨する)ことである。会社の勧めに応じて従業員が退職に合意した場合に、「会社都合による退職」となる。 退職を勧奨する際には、月給の○か月分を再就職支援金として最終給与に上乗せして支払うなど、一定の金銭的な条件を提示することが一般的である。
  2. 希望退職募集

    全社または一部の従業員を対象として、希望退職の募集を行なうことである。従業員が応募し、会社が応じれば、「会社都合による退職」となる。
    退職勧奨と同じく、希望退職の募集を行なう際も、金銭的な条件を提示するのが一般的である。

(2)会社都合による退職と解雇の違い

解雇は、労働契約の途中解除であり、有効性について争いが生じる可能性がある。

一方、双方の合意による会社都合退職は、合意に基づく労働契約の終了である。そのため、正当な手順により「会社都合による退職」に導くことができれば、解雇の場合に生じがちなトラブルのリスクを避けられる。

特に、会社の経営危機等で人員整理を行なわざるを得ない場合には、紛争に発展する危険性の高い整理解雇に踏み切る前に、退職勧奨、希望退職募集を実施して、できる限り解雇を回避するよう努めることが重要となる。

(3)会社都合退職と失業手当の関係

従業員が退職勧奨や希望退職に応じて退職した場合は、その旨を失業手当の受給に使用する離職票に記載するため、離職理由は普通解雇と同じく「会社都合」となる。

離職理由が会社都合となった場合、失業手当の受給において次のメリットがある。
  1. 3か月間の給付制限期間がない

    一般の離職者が失業手当を受給するには、ハローワークで求職の申込みをしてから7日間の待期期間終了後、3か月間(2020年10月1日以降の退職は5年間で2回に限り2か月間)の給付制限期間があるが、会社都合退職の場合は、この給付制限期間がない。
  2. 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば受給可能

    一般の離職者が失業手当を受給するには、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上必要だが、会社都合退職はこの要件が緩和されている。
  3. 一般の離職者よりも手厚い給付日数

    会社都合退職の場合は、一般の離職者に比べて、年齢等に応じて給付日数が手厚くなっている。

(4)会社都合退職と助成金

厚生労働省が実施する助成金の中には、会社都合退職を出した場合に申請ができなくなったり、支給が終了するものもある。この点、注意が必要である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。