ビジネスわかったランド (人事・労務)

退職

退職時の年次有給休暇の取扱い
ここでは、従業員が退職する場合の年次有給休暇の取扱いについて説明する。

(1)年次有給休暇の残日数の消化

退職する予定の従業員が、年次有給休暇の残日数の消化を申し出てきた場合、会社は年次有給休暇の取得を拒否することはできない。

退職予定者が年次有給休暇の消化を申し出て、業務の引継ぎにも支障がないのであれば、会社は退職予定者の希望どおり、年次有給休暇を取得させなければならない。

問題は、引継ぎに支障が生じる場合だが、基本的に年次有給休暇の取得を拒否できないことに変わりはない。会社としては、次のような対応を検討する必要がある。
  1. 退職日を後ろにずらして、引継ぎ完了後に年次有給休暇を取得してもらうよう交渉する
  2. 引継ぎに支障があり、事業の正常な運営を妨げる場合は、労働基準法で認められている年次有給休暇の時季変更権を行使し、取得時季を変更する(ただし、退職日を越えて時季変更権を行使することはできない)
以上の対応をまとめると、下図のようになる。
退職を希望する者が、退職前に年次有給休暇の取得を希望
退職前の引継ぎに支障が、
 
生じない   生じる
   
本人の希望どおり年次有給休暇を付与   本人と話し合い、退職日をずらす等の対応をとる   引継ぎが行なわれないことで事業の正常な運営が妨げられる場合は、時季変更権の行使により取得時季を変更することが可能。ただし、退職日を越えて取得時季を変更することはできない

(2)年次有給休暇の買上げの可否

労働基準法で付与が義務づけられている年次有給休暇を事前に買い上げることは認められていない。

行政解釈でも、年次有給休暇の買上げの予約をする代わりに、請求できる年次有給休暇の日数を減らしたり、請求された日数を与えないことは労働基準法違反である、とされている(昭和30年11月30日基収4718号)。

一方、従業員が年次有給休暇の権利を行使せずに退職日まで勤務し、結果として消滅してしまう年次有給休暇がある場合に、その残日数を退職時に買い上げることは、事前の買上げではないので問題ない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。