ビジネスわかったランド (人事・労務)

退職

退職時の誓約書
入社時と同様、退職時にも誓約書を提出させることは重要である。ここでは、誓約書の内容について解説していく。

(1)退職後の守秘義務

営業秘密等の機密情報は、一度漏洩してしまうと広範囲に拡散し、その回復は非常に難しいといわれている。

元来、従業員は、労働契約を締結した段階で守秘義務を負い、退職後も機密情報を漏洩してはならないという義務が課されている。また、退職後の機密情報の漏洩が不正競争防止法に定められた営業秘密侵害罪に該当する場合は、同法によって処罰される。

退職後も守秘義務を負うことは、誓約書の有無には左右されないのであるが、退職時に誓約書を提出させることで、より明確に、退職後の守秘義務が厳格なものであることを示す(退職者に意識させる)効果が期待できる。

(2)会社の備品等の返却

守秘義務とも密接に関係するが、退職時までに、会社が従業員に貸与しているものをすべて返却させる必要がある。具体的には、パソコン、タブレット等の情報端末、書類のファイル、社員証や名刺などが該当する。

以下、一般的な退職時の誓約書のモデルを掲げる。
○年○月○日

○○○株式会社
代表取締役 ○○一郎 殿

誓約書(退職時)

このたび、私 ○○○○ は貴社を退職するにあたり、下記のとおり誓約いたします。
  1. 私は、本日までに、下記のものをすべて貴社に返却し、写し、コピー等は一切保管しておりません。

    (1)在職中に取り扱った資料、書類、名刺その他これに類するものおよびその写し
    (2)社員証、健康保険証等の身分に関わるもの
    (3)CD、DVD、フラッシュメモリー等の記録媒体
    (4)パソコン、PDA、携帯電話、その他会社の備品
    (5)その他会社が所有するもの
  2. 私は、在職中に知り得た貴社の技術上または営業上の機密情報、個人情報について、退職後も他に漏洩または漏洩につながる行為および私用に供することは一切行ないません。
  3. 私は、在職中、貴社の○○に関する機密情報を取り扱っていたことに関連して、退職後○年間は、○○の地域において、次の行為を行ないません。
    (1)競業他社(競業他社の提携先、関連企業を含む)へ就職(役員就任を含む)し、○○技術の開発に関連する業務を行なうこと(2)自己で事業を行ない、○○技術の開発に関連する事業を行なうこと
  4. 私は、この誓約書に違反することにより貴社に損害を与え、また信用を低下させた場合は、その一切の損害を賠償します。

以上、ここに誓約いたします。

従業員氏名 ○○○○ 印

書式ダウンロード

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。