ビジネスわかったランド (人事・労務)

退職

退職願の取扱いと会社の対応

(1)退職願(書面)の提出

退職の意思表示自体は口頭でも成立するが、退職日や退職理由について明確な証拠を残す意味からも書面が鉄則となる。

実際、退職願は書面で提出してもらうという会社がほとんどである。

退職願を提出させる時期は、業務の引継ぎや退職に向けての事務手続きを考慮し、遅くとも退職日の1か月前を目処とするとよいだろう。

参考として、以下に、退職願の書式モデルを掲げる。
退職願

私事このたび、一身上の都合により、来たる○年十二月三十一日 をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。

○年十一月二十日 ○部○○課所属
○○太郎 印
 ○○株式会社
  代表取締役社長 ○○次郎 殿

(2)書面の交付

会社として退職を承認する場合は、その旨の意思表示を行なう必要がある。
従業員 退職願の提出
承認の意思表示
会社
この承認の意思表示は口頭でもかまわないが、合意退職であることを明確にするとともに、退職に向けた引継ぎや事務手続きの流れを明らかにするためにも、下掲のような書面を交付するとよい。
○年○月○日
○○太郎 殿

退職に伴う連絡票

○○○株式会社
代表取締役 ○○次郎
○○太郎殿の○年○月○日付の退職を承認します。つきましては、退職前の引継ぎおよび退職に関する事務手続きについて、以下で説明します。
  1. 引継ぎについては、○○部課長××××の指示のもと、当初の打合せどおり行なってください。
  2. パソコン、社員証等の会社に返却すべき備品等については、○年○月○日までに期限厳守で会社に返却してください。
  3. 就業規則第○条に基づき提出が義務づけられている退職時の誓約書については、会社所定の様式を使用し、○年○月○日までに期限厳守で提出してください。
  4. 次の点については、直接総務部へ連絡してください。 (1)源泉徴収票の希望枚数(特に希望がない場合は1枚を交付) (2)住民税の一括徴収、普通徴収または特別徴収継続の希望(1月1日から4月30日までに退職する場合は、原則一括徴収となります) (3)健康保険の任意継続の希望 (4)退職証明書の発行

以上

(3)退職願の撤回

実務に携わっていると、従業員が、数日前に提出した退職願を撤回したいと申し出てくるケースに遭遇することがある。この場合、提出された退職願に対して、すでに会社として承認する旨の意思表示をしていれば、退職の合意が成立したわけであるから、退職願の撤回を認める必要はない。

一方、会社の承認を受けるまでは、当該申出は有効ではないため、従業員は撤回することも可能である。
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著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。