ビジネスわかったランド (人事・労務)

退職

退職の意味と種類
ここでは、会社が労務管理上、特に注意を払う必要のある「退職」について、その意味するところと合意退職の種類について解説していく。

(1)退職とは

退職とは、会社側からの一方的な労働契約の解除以外の労働契約の終了のことであり、具体的には次のものを指す。
1. 会社と従業員の双方が合意したことによる労働契約の終了
2. 契約期間の定めがある労働契約の期間満了
3. 従業員からの一方的な退職の通告による労働契約の終了
4. 定年到達による労働契約の終了
5. 休職期間満了による労働契約の終了
6. 行方不明になったことによる労働契約の終了
7. 死亡
なお、会社側から一方的に労働契約を解除することは、退職ではなく「解雇」となる点に注意が必要である。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となるとともに、解雇制限、解雇予告または解雇予告手当の支払い等の法律上の義務が発生する。

(2)合意退職には2種類ある

会社と従業員双方の合意による退職としては、次の2つのパターンがある。
  1. 従業員が一身上の都合により退職を願い出て、会社が退職を承認するケース
  2. 会社が事業の縮小等の理由により退職の働きかけ(退職勧奨)を行ない、それに応じて従業員が退職するケース
【パターンA】
従業員 1 退職願いの提出
2 退職の承認
会社
【パターンB】
会社 1 会社からの退職働きかけ
2 退職することの同意
従業員
なお、従業員が退職の意思表示を行ない、会社が退職の承認をしないというケースもあるが、会社が承認しなければ退職できないということはない。

なぜなら、民法第627条では、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めているからである。

(3)退職の意思表示

退職の意思表示には、「一方的な退職の通告」と「退職の承認を求める退職の申出」の2種類がある。

前者の場合は、退職の効力が発生するのは通知が会社(事業主)に到達したときとなる。後者の場合は、会社(事業主)が承認をしたときに有効となる。

なお、従業員から退職の意思表示があったとき、その意思表示が一方的通告なのか、承認を必要とする申出なのかについて、客観的に明らかな状況がない限り、退職の申出の承認によって効力が生じるものとして対応することになる。

「客観的に明らかな状況」とは、たとえば一方的な退職の通告とともに健康保険証、社員証などが送付されてきた場合などを指す。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。