ビジネスわかったランド (人事・労務)

解雇

その他の解雇時の注意点
ここでは、会社が従業員を解雇する際に直面する実務上の問題について解説する。

(1)解雇予告手当の受領拒否

従業員が会社側の即時解雇を認めず、解雇予告手当の受領を拒否した場合、会社はどのように対応すればよいだろうか。

解雇予告手当の支払いをしようとした事実をもって、解雇予告手当を支払ったことになると解されるが、「解雇予告手当を支払った」という事実を明確に証明するためには、法務局へ供託する方法が望ましい。

行政通達は、次の場合に解雇予告手当が支払われたことと同様の効果が生じるとしている。
  1. 郵送等の手段により、従業員宛てに発送を行ない、従業員の生活の本拠地に到達したとき(受領するかどうか、また従業員の存否は関係しない)
  2. 会社が支払日を指定し、通知した日に本人が来なかった場合はその指定日、支払日を指定せずに本人に支払いを通知し、本人が来なかった場合は当該従業員の通常出頭し得る日

(2)契約社員の雇止め

雇用契約を複数回更新し、長期間にわたって雇用してきた契約社員に対し、契約更新をしない旨を伝える際の注意点について解説する。

あらかじめ当該契約を更新しない旨が明示されている場合を除き、次の労働者に契約更新をしない旨(雇止め)を通知する際には、少なくとも契約期間満了日の30日前までに予告が必要となる。
・3回以上契約が更新されている有期契約労働者(1か月×3回など)
・1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者
また、この予告後、または雇止めをした後に、当該従業員から「雇止めの理由」について証明書の交付を求められた場合は、会社は遅滞なくこれを交付しなければならない。

雇止めの理由は、「契約期間満了」ではなく、なぜ契約を更新しなかったのかを具体的に記載する必要がある。

さらに、有期契約労働者であっても、「期間の定めのない契約と実質的に同じ状態」と認められるケースがあることに留意する必要がある。

具体的には、以下の状況等をふまえて判断される。
・有期契約労働者の業務の性格
・契約更新の回数・勤続年数
・契約更新時の手続方法
・使用者等の言動
・他の同等の地位にある従業員の契約更新状況
「期間の定めのない契約と実質的に同じ状態」と認められると、単純に「期間満了=雇止め」とする取扱いは無効となる可能性があり、解雇権濫用法理に基づき有効性が判断されることになる。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。