ビジネスわかったランド (人事・労務)

解雇

解雇が有効とみなされるための要件(その2)
労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定している。

ここで会社が押さえておくべきポイントは、次のとおりである。

(1)客観的に合理的な理由があるか

客観的に合理的な理由があるとみなされるためには、「解雇事由となる事実が本当に存在したことが客観的に立証できること」が必要となる。

つまり、当該事実が存在したことが、第三者に対しても立証できる必要がある。

なお、この事実の立証は会社が行なう必要があるため、解雇に至った指導票、顛末書等の証憑を保管しておくことが重要となる。

(2)社会通念上相当であるか

「解雇することが世間の常識から考えて厳しすぎる」場合は、社会通念上の相当性を欠くことになる。

次の2つのケースで、社会通念上の相当性を考えてみよう。

ア 能力不足による解雇

当人の能力が他の同じ状況に置かれている従業員と比べて著しく劣っていたり、長期にわたって指導・教育を続けたが、まったく改善せず、今後の改善の見込みも期待できない場合である。

当人に対して指導・教育を行なっていない場合は、社会通念上相当であるとはみなされない可能性が高い。

イ 心身の負傷・疾病による解雇

当該負傷・疾病が労務提供を不可能にするほどのもので、休職制度がある会社においては当該制度を利用後も回復せず、今後の回復の見込みもない場合を指す。

単に「病気になり入院しなければならなくなった」という程度ではないことに注意が必要である。
客観的に合理的な理由があること
社会通念上、相当であること
解雇は有効
立証責任は会社にあるため、指導票、顛末書等の解雇に至る経緯を証明できる証憑を残しておかないと、立証は難しい。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。