ビジネスわかったランド (人事・労務)
労働時間・休日等
裁量労働制、高度プロフェッショナル制
(1)裁量労働制とは
裁量労働制とは、業務の性質上、遂行方法や時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者が具体的な指示をすることが困難な業務について、実際に何時間働いたかにかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度である。
裁量労働制には、次の2つの種類がある。
裁量労働制には、次の2つの種類がある。
1 専門業務型裁量労働制
2 企画業務型裁量労働制
(2)専門業務型裁量労働制とは
専門業務型裁量労働制とは、法で定められた特定の業務に従事する従業員について、実際の労働時間数とは関係なく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度である。
対象となるのは、厚生労働省令と厚生労働大臣告示により定められた以下の19業務である。
専門業務型裁量労働制を導入するためには、就業規則に条文を定めるとともに、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要がある。
なお、2024年4月1日からは銀行または証券会社における顧客の合併・買収に関する調査または分析、およびこれに基づく合併・買収に関する考案および助言の業務が追加され、20の業務が対象となる。
対象となるのは、厚生労働省令と厚生労働大臣告示により定められた以下の19業務である。
- 新商品、新技術の研究開発等の業務
- 情報処理システムの分析または設計業務
- 新聞、出版、放送番組の取材・編集業務
- 衣服、工業製品、広告等の新たなデザインの考案業務
- 放送番組、映画等の制作におけるプロデューサー、ディレクター業務
- コピーライター業務
- システムコンサルタント業務
- インテリアコーディネーター業務
- ゲーム用ソフトウェアの創作業務
- 証券アナリスト業務
- 金融工学等の知識を用いて行なう金融商品の開発業務
- 大学の教授研究業務
- 公認会計士業務
- 弁護士業務
- 建築士業務
- 不動産鑑定士業務
- 弁理士業務
- 税理士業務
- 中小企業診断士業務
なお、2024年4月1日からは銀行または証券会社における顧客の合併・買収に関する調査または分析、およびこれに基づく合併・買収に関する考案および助言の業務が追加され、20の業務が対象となる。
(3)企画業務型裁量労働制とは
事業運営上の重要な決定が行なわれる本社などにおいて、企画、立案、調査、分析を行なう者を対象とした裁量労働制である。
具体的には、以下の事業場が該当する。
みなし労働時間制の運用方法は専門業務型裁量労働制と同じだが、企画業務型裁量労働制を導入・運用するためには、労使委員会を組織し、その決議が必要である点が大きく異なる。
なお、2024年4月1日からは労使委員会の開催頻度等について改正されることに注意が必要である。
具体的には、以下の事業場が該当する。
- 本社・本店である事業場
- 1のほか、次のいずれかの事業場 イ 当該事業場の属する会社等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場 ロ 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく、独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行なっている支社・支店等である事業場
なお、2024年4月1日からは労使委員会の開催頻度等について改正されることに注意が必要である。
(4)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)
高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を必要とする業務(例:ファンドマネージャー)に従事し、一定の要件を満たした労働者については、労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金の適用を除外する制度である。
◆対象となる労働者・書面等による合意に基づき職務の範囲が明確に定められている労働者・1年間に支払われると見込まれる賃金の額が、『平均給与額』の3倍を相当程度上回る労働者(具体的には年収1,075万円以上であること)
◆主な導入手続
・職務記述書等に署名等する形で職務の内容および制度適用についての本人の同意を得る・労使委員会(導入する事業場の委員会)で、対象業務・対象労働者をはじめとした必要事項等を決議
◆必要となる健康確保措置
使用者は、客観的な方法等により在社時間等の時間である「健康管理時間」を把握し、健康管理時間に基づき、法律に定められた措置を講じる必要がある。
◆対象となる労働者・書面等による合意に基づき職務の範囲が明確に定められている労働者・1年間に支払われると見込まれる賃金の額が、『平均給与額』の3倍を相当程度上回る労働者(具体的には年収1,075万円以上であること)
◆主な導入手続
・職務記述書等に署名等する形で職務の内容および制度適用についての本人の同意を得る・労使委員会(導入する事業場の委員会)で、対象業務・対象労働者をはじめとした必要事項等を決議
◆必要となる健康確保措置
使用者は、客観的な方法等により在社時間等の時間である「健康管理時間」を把握し、健康管理時間に基づき、法律に定められた措置を講じる必要がある。
注:導入を検討する場合は、事前に所轄の労基署と相談することをおすすめする。
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。
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