ビジネスわかったランド (人事・労務)

労働時間・休日等

みなし労働時間制

(1)みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、実際の労働時間を把握することが困難であるため、あらかじめ労使協定等で「みなし労働時間」を定めておき、実際に1日何時間働いたかにかかわらず、みなし労働時間分を働いたとみなす制度である。

1日の「みなし労働時間」を8時間と定める

実際の1日の労働時間が6時間、9時間などであっても、1日8時間働いたとみなす

労働基準法上、みなし労働時間制が適用されるのは次の3つである。

1 事業場外のみなし労働時間制(労働基準法第38条の2)
2 専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)
3 企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)

みなし労働時間制は、正しく運用することができれば有用な制度であるが、誤った運用を行なうと未払い残業代問題に直結するため注意が必要である。

また、休憩、法定休日や深夜労働の割増賃金は通常どおり適用されるため、この部分の労働時間の管理は必須である。さらに、安全配慮の観点から長時間労働の抑止(管理)も求められる。

(2)事業場外のみなし労働時間制

事業場外のみなし労働時間制は、事業場の外で働くために、使用者の指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な従業員(例:ルートセールス、出張、在宅勤務を行なう従業員)について、就業規則上の所定労働時間もしくは業務の遂行に必要とみなされる時間を働いたとみなす制度である。

なお、次の場合は使用者の指揮監督下にあるとみなされ、みなし労働時間制は適用されない。

1 労働時間の管理を行なう者とともに働く場合
2 携帯電話等により随時使用者の指示を受けている場合
3 あらかじめ訪問先・帰社時刻等の具体的指示を受けた後、指示どおりに働いて帰社する場合

(3)導入方法

労使協定の締結により、みなし労働時間を定める。労使協定の締結は義務ではないが、できる限り労使協定を締結して運用することが望ましいとされている。

なお、法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定した場合は、労働基準監督署に労使協定を届け出る必要がある。
注意点!
みなし労働時間制が適用されていれば、一切残業代を支払わなくてよいというわけではない。

事業場内の勤務は、使用者の指揮監督下にあり、労働時間管理の対象となるため、別途労働時間を把握し、残業代の支払いが必要である。

したがって、事業場外のみなし労働時間制は、在宅勤務や終日外勤・直帰する営業社員、出張者には適しているが、事業場外・内の勤務が混在している従業員には適さない制度といえる。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。