ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

給与計算と人的控除の基礎知識
ここでは、配偶者控除や扶養控除、障害者控除などの人的控除と、源泉所得税額の計算について基本的な事項を説明する。

(1)「給与所得の源泉徴収税額表」とは

給与を支払うときに源泉徴収する所得税額は、その支払いの都度、「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求める。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されている場合には「甲欄」、提出がない場合(他に主たる勤務先がある場合)には「乙欄」で税額を求めることになる。

(2)扶養親族等の数と税額の変動

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合は「甲欄」適用となり、申告書に記入された扶養親族等の数によって源泉所得税額が変わる。

また、1月~12月までの間に、扶養親族等の数に異動があった場合には、その都度、源泉徴収する所得税額が変動する。最終的に、年末調整で過不足税額が精算されるとはいえ、扶養親族等の増減による月々の手取り額への影響は少なくないため、増減があった場合は、確実に給与計算に反映させることが大切である。

(3) 扶養親族等の数え方

年の途中に以下のような事情が生じた場合には、扶養親族等の数が増減する。
 
  1. 本人が結婚し、配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該当するとき
    たとえば、本人(※1)が結婚して、配偶者の年間所得の見積額が95万円以下(収入150万円以下)であれば、その月から源泉控除対象配偶者となり、扶養親族等の数は「1人」加算される。一方、本人が離婚して、源泉控除対象配偶者がいなくなれば「1人」減少する。
  2. 本人が配偶者と死別・離別し、「寡婦」「寡夫」に該当するとき
  3. 本人、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者(※2)や扶養親族が「障害者」に該当するとき
  4. 扶養親族の就職等により、本人と生計を一にしなくなるとき
(※1)年間所得900万円(収入1,095万円または1,110万円)以下の者に限る (※2)給与所得者と生計を一にする配偶者であって、年間所得の見積額が48万円(収入103万円)以下の者

(4) 配偶者や扶養親族が70歳以上の場合

控除対象配偶者や扶養親族がその年の12月31日までに70歳に達した場合、配偶者は「老人控除対象配偶者」、扶養親族は「老人扶養親族」または「同居老親等」に該当することになる。

結果として、その年から控除額が増えるが、年末調整で精算されるので、月々の源泉徴収税額には反映されない。月々の源泉徴収税額の扶養親族数にも変更はなく、一般の控除対象配偶者・扶養親族と同じく「1人」として数える。

(5) 本人や配偶者、扶養親族が障害者の場合

身体障害者手帳や障害者控除対象者認定書の交付を受けている場合等、一定の要件に該当するときには、障害者控除(または特別障害者控除)、同居特別障害者控除の適用が受けられる。障害者控除は、月々の源泉徴収税額の扶養親族数にも反映される。

(6) 年少扶養親族(16歳未満の扶養親族)

扶養親族のうち、年齢16歳未満は控除対象扶養親族ではないので、障害者である場合を除き扶養親族としてカウントしない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。